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出店時の売上予測、その精度向上の秘訣とは

多くのチェーン企業様(飲食業や小売業など業種・業態を問わず)とお話をさせていただく中で次のようなお悩みをよく耳にします。「出店時においてどのくらいの売上があがるかをシミュレーションするが、実際に出店した時の売上との乖離(誤差)が大きい」と。そこで当社では2020年に「売上予測AIモデリングサービス」を事業化し、ありがたいことに導入企業様からも好評をいただいております(開発の経緯は前回コラムを参照)。今回のコラムでは、チェーン企業様の現状や課題に対して、プロジェクトマネージャーの旗持に語ってもらいました。これまでの代表的な分析手法の課題、そして売上予測分析において大切なことは何なのか、を聞き出したいと思います。

 目次 
チェーン企業が抱える悩み
チェーン企業が行っている代表的な分析手法の特徴
ハフモデル分析の課題
売上予測分析において重要なこと
高精度な売上予測を行うには
さいごに


チェーン企業が抱える悩み

─ チェーン企業様が抱える悩みとは何ですか。

多店舗展開されているチェーン企業様は、出店する物件に対して売上の予測をシミュレーションしますが、この予測が非常に難しいとお聞きします。多くの企業様にて、予測値に対する実績値の誤差が±20~30%、もしくはそれ以上の予測誤差が出ており、この乖離を減らしたい(目標は10%未満!)というご要望をいただきます。

チェーン企業が行っている代表的な分析手法の特徴

─ 今現在、チェーン企業の皆様はどのような分析を行っているのですか。

多くの企業様が採用されている手法として「ハフモデル分析」と「重回帰分析」というものがあります。ハフモデル分析は、多くの商圏分析ソフトに実装されており、多くの企業様で活用されています。また重回帰分析は、商圏分析ソフトがなくともエクセルなどの表計算ソフトで実施することができるため、こちらも店舗開発部門の方にとって馴染み深いものかと思います。

─ 馴染み深くない方のためにも簡単に説明してもらえますか。

わかりました。

ハフモデル分析
ハフモデル分析は、自店舗に消費者が買い物に出かける確率(吸引率)を基に、売上予測を行う手法のことをいいます。より詳細をいいますと、自店舗と競合店舗との状況を考慮しながら顧客数を算出し、顧客数と客単価をかけ合わせることで売上を予測します。

吸引率 → 顧客数 → 顧客数×客単価 → 売上予測

ハフモデル分析は、近くて面積が大きい店舗ほど顧客を吸引できるという考え方がベースになっています。
具体例でお話した方がイメージしやすいかと思いますので、小売チェーンを例にみていきたいと思います。

消費者が住む周辺に3つの店舗A、B、Cがあった場合、消費者はどの店舗に買い物に出かける確率が高いかを算出します。ハフモデル分析では、居住地から店舗までの「距離」と、店舗面積といった「店舗の魅力値」の2つが売上に大きく影響することを前提とした考え方のため、店舗までの距離と時間が短ければ短いほど、そして店舗の規模が大きければ大きいほど、消費者が訪問する確率は高くなります。そのため、上記のケースでは消費者は「店舗C」に訪問する確率が高く、この計算を元に売上予測を行います。
このように、ハフモデル分析は競合店舗を加味しつつも、売上をシンプルに説明したものとしてわかりやすい分析手法であることが特徴です。

重回帰分析
また重回帰分析は、1つの目的変数を複数の説明変数で表した手法のことをいいます。つまり、予測したい売上(目的変数)を席数や駐車場台数などといった複数の項目(説明変数)を数式で表したものです。こちらも言葉だけではわかりづらいかと思いますので、今度は飲食チェーンを例に見ていきましょう。売上に影響を与える項目は様々ありますが、ここでは便宜上、席数、駐車場台数、商圏人口の3つを取り上げてお話をします。下図は飲食チェーンの既存店舗の売上と前述3項目を一覧にまとめたものです(数字は例です)。これらの情報を元に1つの計算式(これを予測モデルといいます)を導き出し、その式に出店候補物件の情報を当てはめることで売上を予測していく手法のことを重回帰分析といいます。

このように、売上がどのような要素に影響しているかが見えやすく、わかりやすい(可読性の高い)分析手法であることが特徴的です。

ハフモデル分析の課題

─ なるほど。とてもシンプルでわかりやすい考え方なので多くの企業様で活用されている理由もうなずけます。
しかし、なぜそれらの手法で予測がうまくいかないのでしょうか?ハフモデル分析や重回帰分析の課題を教えてください。

わかりました。
まずハフモデル分析では、ベースとなる「前提条件の設定」に課題があると考えています。具体的には「1.対象者と商圏」、「2.店舗の魅力値」、「3.客単価」です。
1つ目ですが、ハフモデル分析は商圏内居住者を対象としていて、通勤・通学者の行き帰りでの買い物や都心部へショッピングに来る人々が対象に含まれていないのです。店舗に訪れる人は居住者以外にも様々な人が来ることは容易に想像ができるかと思います。また、設定する商圏自体が本当に正しいかどうかもきちんとした検証が必要ではないかと考えています。
次に2つ目はハフモデル分析の重要な要素として扱われている「店舗の魅力値」は店舗面積だけで測ることができないという点です。皆さんが店舗に買い物に行く動機として、店舗面積以外にも店舗毎のブランドや置かれている商品といったことも考えているのと同様で、店舗の魅力値=店舗面積と算出することは少々乱暴ではないかと思われます。
最後に3つ目は売上予測を行う際に使う客単価自体が不確定要素である点です。店舗によって客単価は変動しますので、その設定を誤ってしまうとその分売上予測の誤差も大きくなってしまうことになります。
このように、前提条件に考慮されていない点や不確定要素を基に算出した予測値は誤差が大きくなりやすいのではないかと考えています。

売上予測分析において重要なこと

そして、重回帰分析についてですが、その手法自体に問題がある訳ではありません。ここで強調しておきたいことは、重回帰分析は売上予測において予測モデルの作成方法(手段)に過ぎないということです。売上予測はデータの収集から始まり、最終的に分析した結果を評価・検証することまでの全体を指します。つまり、一部だけに着目するのでなく売上予測全体の分析スキームに目を向ける必要があると考えています。当社が商談した中にも、これまで重回帰分析を用いて取り組まれてきたものの期待する予測精度が得られていない企業様において、予測分析の各工程を十分に対応し切れていないという課題が見受けられました。

予測分析は以下の工程が必要になります。
①データ収集:売上に関連するデータを収集
②集団形成:予測モデル作成のための集団形成
③特徴量作成:売上に影響のあるデータ項目(特徴量)の作成
④アルゴリズム探索・選定:様々なアルゴリズムをテストしながら最適なものを選定
  (重回帰分析も1つのアルゴリズムであるが、必ずしも最適とは言えない)
⑤チューニング:精度向上のためのアルゴリズムのパラメータチューニング

一般的な予測分析フロー

データ収集 → 集団形成 → 特徴量作成 → アルゴリズム探索・選定 → チューニング

細かく話し出すとボリュームが多くなってしまうので、詳細はまた今後のコラムでお話させてください。
このように、全体の分析スキームを構築し、各工程をしっかりと取り組んでいくことで売上予測を高精度に行うことができるようになります。

高精度な売上予測を行うには

─ では、高精度な売上予測を実現するには具体的にどのようなことが必要になるのですか?

はい、大きく2つあります。それはデータスキルと統計解析スキルです。
データスキルとは、予測分析を行う上で店舗開発業務の現場の経験や感覚といった知見をいかに多くデータ化できているか、そしてそれらのデータをどのように活用するかということです。売上予測を行う上でまず必要になるのは企業様が保有されているデータです。データの整備状況の良し悪しによりその後の予測精度の明暗が別れるといっても過言ではありません。データがなければどんなに高度な分析スキルを持っていても予測精度を向上させることには限界があります。また、企業様が置かれている状況や課題を理解することで、どのようなデータを使えば課題解決につながるのかという視点を取り入れながら対応していくことが重要です。
次に統計解析スキルとは、予測分析の材料となるデータを活用し統計的に正しい手法で分析を行うことです。企業様が保有する大量のデータは形式が統一されていないことが多いため、データを取り扱いやすい形へ効率的に変換、そして設計していかなければなりません。また、分析の目的や用途に応じてどのような分析手法を用いればよいかを的確に判断することも求められます。
この2つのスキルはどちらか一方あるだけでは不十分で、どちらも予測分析には欠かすことのできないものです。

─ 非常に高度なスキルが求められるということですね。

そうですね。しかし、それらスキルを得ることは容易なことではなくその対応に頭を抱える企業様も多くいらっしゃいます。そのような企業様を支援するために当社では売上予測AIモデリングサービスを提供しております。

─ 当社AIモデリングサービスではどのようなことが実現できるのですか?

当社では企業様の状況を知るために徹底したヒアリングを行い、店舗開発業務に携わる皆様現場の知見を定量化するお手伝いをしております。また、出店時において企業様は何を重視されているのか、現状どのような取組をされているのかといったお話を通じて企業様の実現したいゴールに向けて分析スキームを構築してまいります。そして、統計解析スキルが豊富なデータサイエンティストにて統計的に正しい手法で予測モデルを作成いたします。もちろん結果として、高精度な売上予測モデル作成を実現しております。
その他にもアピールポイントは沢山あるのですが、前回コラムにて部長の能登屋が熱く語っておりますので、まだ読まれていない方がいらっしゃいましたら是非ご覧いただければと思います。

コラム:
最新のAI技術を活用して売上を高精度に予測し、飲食・小売事業者様を支援。
https://mapple.com/column/202002-yosoku/

さいごに

─ では、さいごにチェーン運営企業の皆様に向けて伝えたいことはありますか?

誤解がないように言いますが、チェーン企業の皆様がこれまで取り組まれてきた手法を真っ向から否定しようとは思っておりません。何故なら、既に期待された予測精度を達成している企業様もいらっしゃるかもしれませんので。しかし、まだまだ期待した精度に至っていない企業様も多くいらっしゃることもまた事実だと思います。繰り返しになりますが、売上予測分析で大事なことは「分析スキームの構築」です。企業様が実現したいことに合わせてどのように取り組んでいけばよいかをしっかり検討・整理し、実行していくことがとても大切です。もし少しでもご興味がありましたら、無料相談を行っておりますので是非お問合せください。企業様のお悩みなどをお聞かせいただき、そのお手伝いを当社マップルでご支援させていただければこの上なく幸せに思います。
本コラムを通じて皆様に少しでもプラスとなる情報をお送りできていれば嬉しく思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。


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