2026年10月09日配信
マップルでは2024年、各種業務におけるオープンデータの利活用促進を目的に、「スーパーマップル・デジタルですぐに使える編集済オープンデータ無料ダウンロードサイト」(以下「編集済オープンデータサイト」)を開設しました。国が公開するハザード情報、都市計画決定情報、地価公示・地価調査などのデータを、マップルの地図ソフト「スーパーマップル・デジタル」で即座に活用できるフォーマットに加工・編集して無料で提供しており、今年で開設3年目を迎えました。
本サイトで提供するデータは、グループ会社の若手社員が素材データの確認から加工手順の設計、最終成果物の検証までを一貫して担当し整備を行っています。単なるデータ変換にとどまらず、「実際の業務でどのように活用されるか」という利用者の視点に立ち、品質の向上に取り組んでいます。
本コラムでは、「オープンデータ利活用促進プロジェクト」でデータ制作を担当した株式会社昭文社クリエイティブの若手社員が、公的データを実務で「使える形」にするまでの整備におけるリアルな課題や、専門家との対話から得た気づきを紹介します。
実務でオープンデータを活用されている方、これから活用を検討されている方の参考となれば幸いです。
編集済オープンデータを読み込み、地図上に重ね合わせて表示したイメージはじめまして。マップルと同じ昭文社グループに属する株式会社昭文社クリエイティブでPOI・地図データの制作を担当している小川裕貴と申します。新卒で入社して2年目とまだ日は浅いのですが、このたび「オープンデータ利活用促進プロジェクト」の担当として、国が公開しているオープンデータを、マップルの地図ソフト「スーパーマップル・デジタル」ですぐに使える形に加工・編集する仕事に携わりました。

今回は、そのデータ制作の最前線でどんな難題や思わぬ落とし穴に直面したのか、そして泥臭く向き合う中で感じたリアルな気づきを書かせていただきます。
入社1年目の3月、「スーパーマップル・デジタルですぐに使える編集済オープンデータ」の制作担当の一人になりました。正直に書きますと、当時の私はデータ変換もデータ制作もまったくの未経験でした。
ファイルの拡張子が何を意味しているのかもよく分かりませんでしたし、社内で使われている独自ツールやシステムに関しては、画面を開いてもどこから触ればいいのか見当もつきませんでした。いざ触ってみると地図データやそれを構成する各システムには先輩たちが積み重ねてきた経験が詰まっているのだと感じました。
とにかく難しい、というのが最初の印象でした。複雑な変換作業、ファイルやフォルダの整理の方法、リリースというゴールに向けた長期間の作業も初めての経験でした。今でも難しいと思うところは変わりません。

ただ、難しさの中身は変わったように思います。最初の頃は「何が分からないのかが分からない」という難しさでした。今は「ここの処理が厄介だ、このシステムはフリーズしやすいと分かったうえで、どう処理するか」という難しさです。この業務を通して、成長を実感できた部分のひとつです。
私が担当したデータは、下記のように大きく分けて三つあります。
① 防災・災害系:
洪水浸水想定区域、土砂災害警戒区域、津波浸水想定、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、災害危険区域、高潮浸水想定区域、大規模盛土造成地
② 都市計画決定情報:
都市計画区域、用途地域、防火・準防火地域、高度地区、地区計画、立地適正化計画、都市公園など(計17種類)
③ 地価情報:
地価公示・地価調査
これらを全国分、マップルの製品であるスーパーマップル・デジタル27上に表示できるようにすることが私たちの目的でした。
「変換」というと機械的な作業に聞こえるかもしれませんが、実際にはボタンひとつで終わるようなものではありませんでした。各オープンデータごとにバラバラな基準や表記を揃えて、属性を整理して、地図上で表示する色や塗りつぶしを設定して、名称を表示させて、そこでようやく地図として意味のあるものになります。
いろいろなデータを扱いましたが、いちばん手強かったのは地価公示・地価調査でした。先輩が担当していたものを、勉強のために私も同じ処理をおこないました。
まずとても量が多いです。そのうえ一件一件が細かく、全国の膨大な地点それぞれに、価格だけでなくたくさんの属性がついています。年次ごとの積み重ねもあります。処理の手順をどこかで間違えると、全国分に影響が出てしまいます。率直に言って、とても手間のかかる作業ですし、新しいものを作り出すわけではなく、変換をすることに何の意味があるんだろうと思ったこともあります。
地価データに紐づく膨大な属性情報(属性変更コードや用途区分などのデータ構造) ただ、作業をしている途中で気づいたこともあります。これだけ手間がかかるからこそ、誰かが引き受けないと、せっかくのデータも使いづらいままになってしまうのだろうな、ということです。
使う側からすれば、地価が地図の上に、周辺の用途地域と一緒に並んで表示されるだけで、その土地の見え方はかなり変わります。その手前にある負荷のかかる大変な部分を引き受けるのが、自分たちの役目なのだと思うようになりました。
データ変換の現場で、もうひとつ大きな勉強になったのが「公開されているデータの仕様や項目の文字列が、更新に伴って気付きづらい形で変更されていることがある」という、いわば『ステルス変化点』ともいえる点です。
年次更新に伴うデータ仕様変更の例(フラグ値や判定文字の記述変更など)オープンデータは日々進化しているからこそ、前回の仕様と異なる部分が出てくることもあります。作業を進める中で「手順書どおりにいかない場面」に遭遇したことで、「前回動いたから今回も大丈夫」と過信せず、常に最新のデータ構造と丁寧に向き合うことの大切さを体で覚えました。
そして、一年を通じて痛感したのは「国が公開しているオープンデータだからといって、全国どこでも同じ基準で揃っているわけではない」ということです。使用条件が厳しく、二次加工や再配布に個別の確認が必要なものもありました。地域や自治体によって推進のフェーズや運用の事情が異なるため、整備状況やフォーマットに個々の特性が表れることもあります。津波浸水想定などは、そうした差が出やすいデータでした。
学生の頃の私であれば、公的機関が出しているデータなのだから正しいはずだと、疑いもせずに使っていたと思います。作る側に回ってはじめて、公開されているデータの一枚下に、整備の事情や地域ごとの制約があることが見えるようになりました。
「公開データをそのまま鵜呑みにするのではなく、一件ごとの背景や地域ごとの制約まで丁寧に確認する」という姿勢の大切さを学びました。
そんな地味な作業を続けていたある日、社外の方とお話しする機会に恵まれました。不動産鑑定士の全国組織でGIS活用を牽引されている幹部の方です。この対話を通じてデータの「出口」をリアルに実感でき、実務の観点から深く勉強になる時間となりました。
私はずっとPCの画面の中でデータと向き合ってきました。属性を整えて、色を決めて、表記を揃える、その先に誰がいるのかは、頭では分かっていたつもりでしたが、実感としては分かっていませんでした。
その方がおっしゃっていたのは、QGISやArcGISといった本格的なGISアプリケーションは確かに高機能だけれど、ふだんGISツールの操作に慣れていない鑑定士の方にとっては、日々の実務の中でさっと確認したい場面では少しハードルが高い、ということでした。その点、スーパーマップル・デジタル27は直感的に扱えるのがちょうどいい。対象の土地がどんな場所で、どんな用途分類なのかがすぐに把握できる。そこがよいのだ、と。
用途地域のデータで表記揺れと格闘していたことが、鑑定士の方の実務の「すぐに分かる」につながっている。お話を聞いていて、そこが自分の中でつながった感じがありました。
さらに勉強になったのは、私自身が考えてもいなかった観点を教えていただけたことです。今回整備したデータとは直接は関係しないものではあるのですが、データを重ねるベースとなる背景地図そのものの正確さがいかに重要か、というお話もありました。
また、今回のスーパーマップル・デジタル27で追加されたAI連携機能についても、お褒めの言葉をいただきました。地図上の地点を右クリックすると、住所や座標、周辺施設の種類・件数といった情報がテキストでまとめて出力され、それをそのままChatGPTやGeminiなどの生成AIに渡して分析してもらえる、というものです。
スーパーマップル・デジタルから出力される生成AI連携用のプロンプト付き「地点情報」 一方で、宿題もいただきました。背景地図は、私たちにとってはあまりに当たり前の存在です。当たり前すぎて意識していなかった部分について、「ここが更新されていないのではないか、背景地図はすごく大事なものだからしっかり更新を頼むよ」と具体的にご指摘いただき、基盤図の整備に対する気持ちが引き締まりました。
社外の方と話すというのは、こういうことなのだと思います。自分たちが立っている場所が外からどう見えているのかを知ることは、日々の業務を客観的に見つめ直すうえで、非常に重みのある体験となりました。

この業務に携わって得た最も大きな気づきは『このデータは世のため人のためになる』、ということです。災害のデータはその土地のリスクを教えてくれますし、都市計画のデータはその土地に何が建てられるのか、街がどこへ向かおうとしているのかを教えてくれます。地価のデータは、その土地が社会からどう評価されているのかを示してくれます。これらが同じ地図の上に重なると、ひとつの土地についてかなりのことが分かります。

不動産の実務にも、防災にも、まちづくりにも、そして自分の住む場所を考える一人ひとりの判断にも役立つはずだと思っています。
また、このデータを起点に広がっていく仕事も、まだたくさんありそうです。鑑定士の方との一度のお話であれだけ発見があったのですから、業種が変われば、また違う使い方や違うご要望が出てくるのではないでしょうか。私たちがまだ気づいていない使われ方が、外の世界にはあるような気がしています。
このデータ整備の仕事は、一度整備して終わりというものではありません。社会の動きに合わせて年次ごとにデータが更新され、より使いやすく仕様が見直されていく。その変化に寄り添いながら、比較し、手を入れて直していく。その繰り返しの中でしか分からないことが確実にあって、今年やってみてはじめて去年の意味が分かった、ということが何度もありました。

だからこそ、この仕事は継続して担当していきたいと思っています。オープンデータはこれからますます充実していくはずですし、公開される仕様もきっと使いやすくなっていくはずです。その変化をひとつひとつ汲み取りながら、より正確に、より迅速にデータへ反映していく。積み重ねた先に何が見えるのかを、自分で確かめてみたいからです。
拡張子も分かっていなかった1年目の3月から、まだそれほど時間は経っていません。相変わらず難しいことばかりですが、このデータは世のため人のためになると思っているので、今後もオープンデータと向き合いながら、ユーザーの皆様にとってより使いやすい形でお届けし、社会の活性化の一助になれるよう、利便性を拡充させていきたいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本プロジェクトの成果は、マップルの「編集済オープンデータサイト」で公開されています。ぜひサイトにアクセスいただき、実際のデータをご覧ください。
なお、「編集済オープンデータサイト」からダウンロードいただいたデータは、マップル製の地図ソフト「スーパーマップル・デジタル」でご覧いただけます。「スーパーマップル・デジタル」をお持ちでない方は、体験版にてご利用いただくこともできますので、まずは体験版をダウンロードの上データをご覧ください。
データに関するご要望・ご意見は、お問い合わせフォームよりお寄せください
スーパーマップル・デジタルですぐに使える
編集済オープンデータ無料ダウンロードサイト
国土数値情報などのオープンデータを、「スーパーマップル・デジタル」でそのまま読み込める形式に編集・加工して、無料で提供