2026年04月17日配信
皆さんが普段、手紙や宅配便で使う住所。
実は、日本にはさまざまな表記ルールが混在しています。中には地域の特性に応じた独特なものもあり、一言で住所といっても大変奥が深いものです。
今回から数回にわたり、そんな日本の住所の表し方と地図における表記について解説していきます。私たちが普段何気なく目にしている住所には、実は『地番』と『住居表示』という2つの体系が存在します。初回となる今回は、この両者の関係性を整理したうえで、特に「地番」にフォーカスして解説します。その成り立ちや、全国の興味深い事例を交えながら紐解いていきましょう。
普段、連絡先として使っている住所とは別に、不動産の登記簿や固定資産税の書類に、見慣れない住所が記載されていることに気づいたことはありませんか?これは、日本で「地番」と「住居表示」という2つの住所が併用されていることに起因しています。この2つの住所の表し方は似ているようで、実は全く異なる役割を持っています。
地番: 土地ごとに割り振られた固有の番号で、主に法務局が管理しています。土地の売買や相続など、不動産の権利関係を明確にするために使われます。
住居表示: 緊急車両の出動や郵便物の配達をスムーズに行うため、市町村などの自治体が定めた住所です。
では、なぜこのように2つの住所が混在しているのでしょうか? その背景には、日本における住所の表し方の、複雑な歴史があります。

日本の住所の表し方が体系的に整備され始めたのは明治時代のことです。
新しい租税制度「地租」を導入するため、政府は全国の土地の所有者を特定し、面積を正確に把握する必要がありました。この土地調査の際に、一つひとつの土地に番号が付けられました。これが「地番」の始まりです。
この地番は、その後、戸籍制度にも利用されました。しかし、時代が進むにつれて、戸籍上の住所とは異なる場所で生活する人が増え、行政の管理は次第に煩雑になっていきます。そこで、住民の居住地を把握しやすくするため、1962年(昭和37年)に「住居表示に関する法律」が公布・施行され、建物を基準にした「住居表示」の整備が進められることになりました。
しかし、全国すべての地域で住居表示が導入されたわけではありません。地番をそのまま使い続けている地域も多く、結果として、現在も地番と住居表示が混在する状況が続いています。
住居表示が導入されてない地域があることを紹介しましたが、中には「無地番」と呼ばれる地番を持たない土地も存在します。国有地や河川、水路などがこれにあたりますが、なかには意外な場所が無地番になっていることもあります。
映画『網走番外地』の舞台として知られる網走刑務所。そのタイトル通り、刑務所のある地域はまさに「番外地」、つまり「無地番」です。
MAPPLE法務局地図ビューアで網走市字三眺の網走刑務所付近を確認すると、地番を示す地図(登記所備付地図)が見当たらず、今でも地番が存在しないエリアであることが分かります。その一方で、歴史的な建造物を移築して公開している「博物館 網走監獄」の所在地には、「網走市字呼人1-1」と地番が設定されています。
当時の姿を残す「博物館 網走監獄」
日本の住所の奥深さに、少しでも興味を持っていただけましたでしょうか。
今回は、住所の表し方である「地番」と「住居表示」を取り上げ、なかでも「地番」にフォーカスして、その歴史や意外な事例を解説しました。日本の住所は、単なる所在地を示すだけでなく、土地の成り立ちや歴史を物語る面白い側面を持っています。
次回も、地番による住所の表し方について、さらに深い部分に迫ります。
出典:
国土地理院ウェブサイト「地理院地図(電子国土Web)データ」(国土地理院)をもとに加工して作成
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成
明治36年測図大正2年鉄道補入 5万分の1「千葉」大日本帝国陸地測量部