MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューアは、全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状が確認できるWebサイトです。今回、MAPPLE法務局地図ビューアを使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。
◆No.75 千葉の谷津(千葉県)~谷津田の筆に秘められた自然と人の営み~
千葉県下総地方には、複雑に入り組んだ独特な形状をした筆(土地)が多く見られます。地図を見ると、規則正しく区切られた水田の筆(土地)が、木の枝のように複雑に枝分かれしている様子がわかります。このような水田は「谷津田」と呼ばれています。
谷津田とは、谷地にある田んぼのことで、地域によっては「谷戸田」や「谷地田」とも呼ばれています。この独特な地形は、太古の昔、海が後退して現れた台地に、河川が浸食したことで谷が形成され、その谷底に土砂などが堆積してできたものです。
赤い部分が「谷津」
谷津での水田耕作は、弥生時代に始まったとされています。谷津を取り囲む丘には樹木が生い茂り、豊富な湧水もあるため、稲作に適した環境でした。平安時代には、香取神宮の神官が領地の谷津を開墾したという記録も残されています。
筆には谷津の水田の特徴が良く表れている
このように、古くから人々に利用されてきた谷津田には、さまざまな動植物が生息し、豊かな自然が育まれてきました。人と自然が共存する谷津田の姿は、日本の伝統的な里山の風景と言えます。しかし近年、谷津田を取り巻く環境は大きく変化しています。農業従事者の高齢化や米の消費量の減少に伴う生産調整などにより、休耕田が見られるようになりました。また、土地開発などによって埋め立てられてしまう場所も出ています。
「谷津田」の周りには里山の風景が広がる
谷津田の減少は、生態系のバランスを崩し、貴重な湧き水の喪失に繋がるおそれがあると危惧されています。こうした状況を踏まえ、貴重な里山の自然を守るための取り組みが進められています。複雑に入り組んだ谷津田の筆(土地)には、長い年月をかけて築かれてきた自然と人の営みの歴史が秘められているのです。
出典:
国土地理院ウェブサイト「地理院地図(電子国土Web)データ」(国土地理院)をもとに加工して作成
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成
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