コラム

地図の雑学|硫黄島(東京都)~筆に秘められた島の歴史と自然の力~

MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.74 硫黄島(東京都)~筆に秘められた島の歴史と自然の力~

この場所をMAPPLE法務局地図ビューアで見てみる

東京から南へ約1,250km、小笠原諸島をはるかに超えた太平洋上に浮かぶ硫黄島(いおうとう)は、太平洋戦争末期の激戦地としてその名が知られています。現在は、自衛隊の基地が置かれ、一般人の立ち入りは制限されていますが、その歴史は人々の記憶に深く刻まれています。硫黄島を地図で見ると、筆(土地)が設定されています。この筆(土地)は、かつて硫黄島に人々が住み、生活が営まれていた痕跡です。

明治時代、硫黄島の開拓は、鮫漁と硫黄採掘を目的として始まりました。その後、地熱を利用した産業が行われるようになりました。昭和初期には村制が施行されるなど、島では人々の生活が営まれていました。しかし、太平洋戦争が激化すると、硫黄島は本土防衛の最前線となり、島民は本土へ強制疎開を余儀なくされました。その後、アメリカ軍と日本軍による激しい地上戦によって島全体が戦火に包まれ、多くの犠牲者を出しました。その時の傷跡は戦争遺跡として今も残されています。

硫黄島の空中写真(1974年~1978年)

このように硫黄島の筆(土地)は、硫黄島に人々が住んでいた島の歴史を物語っています。実は、硫黄島の筆(土地)には、島の特徴を表すもう一つのメッセージが秘められています。1974年から1978年の空中写真を見ると、筆(土地)は島の大きさとほぼ同じ形で設定されています。しかし、2023年の空中写真では、島の面積は筆(土地)よりも一回り大きくなっていることが分かります。

 硫黄島の空中写真(2023年)

これは、硫黄島で起きている地殻変動によるものです。硫黄島では、硫黄の露出や噴気孔が各所に見られ、現在も火山活動が活発に続いています。また、土地の隆起に伴い、海岸線も海側へと拡大を続けています。国土地理院によると、2022年(令和4年)に行われた調査では、島の面積が1.3倍(約6㎢)に広がり、基準点の標高も8m以上高くなっていることが判明しました。そのため、硫黄島の地図に対して内容の修正が行われました。

このように硫黄島の筆(土地)は、人々が住んでいた島の歴史や地殻変動による自然の驚異を我々に伝えているのです。

出典: 
国土地理院ウェブサイト「地理院地図(電子国土Web)データ」(国土地理院)をもとに加工して作成
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成

「地図の雑学」
「地図の雑学」は地図技術者・地図編集者が「地図の制作にまつわる話」や「地図を使った楽しみ方」を紹介するコーナーです。
> これまでの記事一覧はこちら

COLUMN一覧へ