コラム

相続登記の義務化 ~変わる不動産登記制度~
【第1回:不動産登記制度見直しの背景と目的】

近年、全国には所有者不明の土地が多く存在しています。このことは、円滑な土地取引や、公共事業等における土地の有効活用を阻害しており、社会問題となっています。そこで、この春 令和6年(2024 年)4月1日から「相続登記の申請の義務化」の施行を含めた「不動産登記制度の見直し」が進められます。

長年、地図情報のひとつとして土地の地番データを整備しているマップルより、相続登記の申請の義務化と土地の不動産登記情報の確認をするための方法について、今回より全 3 回にわたりご紹介します。

第1回
不動産登記制度
見直しの背景と目的

◆ そもそも「所有者不明の土地」とは

所有者不明土地とは下記のような土地を指しています。
(1) 不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地
(2) 所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地

◆ 所有者が分からない土地がなぜ増えているのか?

国内に存在する所有者不明の土地の広さは増え続けており、何等かの対策を講じないと近い将来北海道の広さに匹敵するほどにもなる、という予測があります。
このような土地が増えている要因として、人口減少や高齢化による土地利用ニーズの低下、都市部への人口流入などにより元々住んでいた地域への関わりが希薄になり所有していた土地への関心が無くなった、もしくは認知されずに放置される、ということがあるようです。

◆ 所有者不明の土地がもたらしている問題

例えば公共事業をはじめとした各種事業や土地の再利用を進める際、買収しようとする土地の所有者確認は、登記簿などの参照によって行われます。ところが、所有者の分からない土地が増えた結果それが困難になり、時間と費用がかかることになりました。
各法務局では「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」に基づき、所有者不明土地の所有者等の探索作業が行われていますが、依然として探索作業には多くの労力も必要とされているのが現状です。

加えて、そうした土地に建物がある状態で放置されることには、災害の発生も懸念されます。長い年月を経て建物が老朽化し倒壊の危険を伴っていても、状態を改善するにはかなりの時間を要し、その間にも自然災害が起こった場合には二次災害を起こす可能性もはらんでいます。

そこで冒頭でも言及したとおり、様々な原因や懸念の元となっている所有者不明土地を解消すべく、不動産登記制度が見直され、令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されることになりました。

◆ 不動産登記制度で見直される点は

「不動産登記制度」は、大切な財産である土地や建物といったいわゆる『不動産』について、誰が所有しているのか、どのような土地か、どこにあってどれぐらいの面積なのか等といった情報を、履歴も含め登記簿に記録し公示(公開)する制度です。

登記情報が常に最新の状態であるようにすべく、不動産登記制度において今回見直される点は下記のとおりです。
・ 相続登記を義務化
・ 忘れると 10 万円以下の過料(違反者に制裁として金銭的負担を課すもの)の可能性
・ 遡及して適用(過去に相続して名義変更をしていないものも義務化の対象)
・ 氏名や住所の変更登記も義務化(令和8年(2026 年)4月1日)


今回は不動産登記制度の見直しに至る背景と、その目的について紹介しました。
次回は、不動産登記制度で見直される点の 1 つにもある「相続登記が義務化」されることについて、詳しい内容と皆さんも注意すべき点を中心にご紹介します。

出典:法務省ウェブサイト(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html)
図の出典:「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成

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