近年、通学途中に児童が巻き込まれる事件や事故が多く発生しており、昨年度から関係省庁が中心となって各地での通学路の安全対策への取り組みが加速しています。各地の小学校では毎年新入生が加わり、必要に応じて通学路の見直しが発生します。安全対策は単年度で実施できるものではなく、着実な継続性が求められます。4月から新年度が始まるこの時期に、改めて安全対策の現状とともに「子供の安全の守り方」について考えてみたいと思います。
通学路の現状紹介
昨年6月、千葉県八街市において下校中の児童の列にトラックが突っ込み、5名が死傷する痛ましい事故が発生しました。この事故を受けて文部科学省から各都道府県に対し、下記観点での「通学路における合同点検の実施について」の依頼が出されました。
- ・見通しのよい道路や幹線道路の抜け道になっている道路など車の速度が上がりやすい箇所、大型車の進入が多い箇所
- ・過去に事故に至らなくてもヒヤリハット事例があった箇所
- ・保護者、見守り活動者、地域住民等から市町村への改善要請があった箇所
出典:通学路における合同点検の実施について(依頼):文部科学省(mext.go.jp)
そして今年3月4日に、その合同点検の結果が文部科学省、国土交通省、警察庁より公表されました。
内容は、文部科学省、国土交通省及び警察庁が連携して、全国の市町村立小学校の通学路について教育委員会・学校、PTA、道路管理者、警察等による合同点検を実施したところ、7万6,404箇所で危険箇所対策が必要というものでした。
出典:通学路における合同点検の結果について:文部科学省(mext.go.jp)
【別紙】通学路における合同点検の結果について(pdf)
実は、通学路の安全対策強化は10年前から継続されています。
2012年にも登下校中の児童が巻き込まれる交通事故が相次いで発生し、文部科学省より通学路における緊急合同点検(依頼)がありました。学校による危険箇所の抽出、合同点検の実施及び対策必要箇所の抽出が実施され、当時も7万4,483箇所の危険箇所という数字が出ていました。
その後、各市町村では通学路安全確保のためのPDCAサイクルとして、対策検討→対策の実施→対策効果の把握→対策の改善・充実→合同点検実施→・・・を繰り返し、通学路の交通安全確保に向けた取組みが続けられています。
<対策済み箇所の推移>
危険箇所の対策がすすめられ、99%以上が対策済となりました
2013年1月:22,714箇所
2013年3月:42,662箇所
2016年3月:68,931箇所
2018年3月:72,238箇所
出典:
通学路の交通安全の確保の徹底について(依頼):文部科学省(mext.go.jp)
通学路における緊急合同点検の取組状況について:国土交通省(mlit.go.jp)
通学路の交通安全の確保に向けた取組状況:文部科学省/国土交通省/警察庁(pdf)
通学路の交通安全確保について|平成26年交通安全白書(概要)-内閣府(cao.go.jp)
通学路の交通安全の確保に向けた取組状況(mlit.go.jp)
通学路合同点検の結果を活かす
今回の通学路合同点検の結果は、今まで継続して取り組まれている対策のさらに上記3つの観点で補完的に行った結果とされています。以前から取り組んでいた危険箇所への安全対策は着実に実行されているものの、依然として痛ましい事件や事故が後を絶ちません。これには様々な要因があると思いますが、道路の新設や学校の統廃合による通学路の変更などが発生しますので、各地域においては常に最新の環境下における安全対策が必要になります。
3月に公表された合同点検の結果を見ても、新たに認識された危険個所の件数が7万件を超えており、対策には一定の時間が必要と思われます。
この機会に各自治体や教育委員会、学校、PTAの取り組みとともに、自分達で身近にできることが何かについても考えていく必要がありそうです。
以前にもコラム(https://mapple.com/column/20211130/)でご紹介しましたが、マップルでは、通学路の安全管理をよりスムーズに行っていただくために『通学路安全支援システム』という製品を提供しています。
マップルが進める通学路の安全支援対策
『通学路安全支援システム』は、地図を利用して何か社会に貢献できることはないかという検討のもと小学校の通学路管理用に特化して開発され、2年前にリリースされました。機能面はもとより、導入いただきやすいリーズナブルな価格であることも評価され、現在では教育委員会などから多くのお問合せをいただき、所管の小学校への導入の検討がすすめられています
本システムは、通学の安全管理に必要な情報(児童の自宅住所・通学路・地域情報・危険箇所情報)を登録し、地図上で可視化して管理することができますが、別売りの地図ソフト(スーパーマップル・デジタル)を購入頂くだけで最新の地図情報に更新いただくことが可能になっています。
また、危険箇所情報は文部科学省の「安全点検リスト」に準拠した登録項目があらかじめ設定されていますので、点検時のチェックリストや報告書用の地図やテキストを簡単に入力、出力することができます。
地域内における情報共有について
「入力したデータを管轄区域で共有したい」というお問合せを多くいただくことがあるため、本システムでのデータ共有方法について、ここで少しご説明いたします。
『通学路安全支援システム』は個人情報保護の観点からオフライン型のシステムとなっており、校内の担当者が入力した内容を他者がリアルタイムで閲覧または操作をすることが出来ない仕様となっております。
とは言うものの、地域で子供の安全を守るためには、学校やPTA、警察など地域のパートナーが協力して対策を行う必要があり、その際には各種情報の共有も必要になってくると思います。
「通学路安全支援システム」では、地図やテキストの情報を用紙出力、画像形式保存、CSV・EXCEL形式にて出力する方法により情報共有いただくことで、スムーズな情報連携を可能にしています。
地図印刷イメージ
印刷した地図のイメージ
地域情報出力イメージ(エクセル形式)
作成した情報のデータ共有・連携については、お客様の要望と照らしあわせながら、情報の安全性と利便性の両立を目指して今後も継続して取り組んでまいります。
教職員の方の働き方改革にも
また、近年では、教職員の方の長時間勤務が深刻化し、学校現場における働き方改革の必要性が高まっています。この要因の一つとして、授業以外の業務が多くなっていることが上げられ、通学路の見守りや安全対策などの地域活動における業務負荷も、その一つと考えられます。そのような教職員の業務効率化の観点でも、マップルは通学路安全支援システムの活用を推進しています。
パソコン操作に不慣れな方は、システムのインストールや情報の登録、継続的な管理業務、紙地図に通学路を手書きで記入して、従来の紙面管理を続けた方が効率的と思われるかもしれませんが、報告書提出時に慌ててデジタルデータ化をしたり、暫定的に紙面管理を続けることは大変と同時に無駄な重複作業となってしまいます。
『通学路安全支援システム』で初期登録を行い、定期的に情報更新していくことで、小学校児童の通学路管理が行いやすくなるだけでなく、教職員の方の業務の効率化、さらには、いざという時の情報共有に役立つものと考えております。
システムが使いにくい、わかりにくい点はご意見をお寄せいただけますと幸いです。日々の積み重ねに役立てるシステムになれるよう、そして、子供の安全管理に最大限お役立ていただけるよう、マップルはこれからも尽力いたします。
さいごに
文部科学省のページでも”通学路交通安全プログラムを策定した際は,地域住民等の協力を得るためにもホームページや広報誌を利用して公表し,適切に情報発信することが極めて重要”とされています(※)。
子供の安全確保において一番大切なことは、学校だけでなく、保護者やPTA、警察等の関係機関、そして自治体や教育委員会も含めて通学路上の危険箇所の情報を多くの人が共有し、社会全体で安全な仕組みをつくっていくことにあると考えています。
『通学路安全支援システム』もその一つの手段として利用されますと幸いです。
※出典:通学路の交通安全の確保の徹底について:文部科学省(mext.go.jp)
ここまで読んでいただきましてありがとうございました。
『通学路安全支援システム』にご興味を持たれた方は是非一度お問合せください。
また、このシステムで地図表示のベースとなっている『スーパーマップル・デジタル』は、単体の地図ソフトとしてもご購入、ご利用いただけます。すぐれた機能が満載ですので合わせてご参考にしてください。
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