コラム

旅行者のビッグデータ解析によって観光地の活性化を支援!

コロナウイルスの感染拡大によって観光産業にはこれまでに無いほど甚大な影響が出ていますが、観光産業の回復は国内経済を立て直す上でも大変重要なポイントです。
そのような環境の中、昨年10月に当社は独自の観光分析ソリューションである「Travelers’ Mind(トラベラーズマインド)」の提供を開始しました。現在はこのサービスを通じて、国内の各観光地における課題を洗い出し、観光産業の回復を支援する取り組みを強力に推進しています。
今回は、当社の観光分析ソリューションリーダーの松野 正に、現在の具体的な取り組み内容と今後の方向性について聞きました。

 目次 
経緯
製品について
用途
今後


経緯
━ まず「Travelers’ Mind(トラベラーズマインド)」を企画した経緯を教えてください。
もともと昭文社の事業部門にいた時に観光に関する課題を解決するためのデータ事業を検討したのが最初の始まりでした。今はデータの時代とかデータは第四の石油などとも言われていますが、昭文社も観光アプリを持っていて、このアプリからは様々なデータを収集することが出来ていました。ただ、これを事業として活用していなかったので、このデータを活用すれば他に無い自社のサービスが展開出来るのではという話になりました。
 
━ リリース後の反響は大きかったようですが、具体的にはどんな話がありましたか?
そうですね、2020年10月22日にリリースしたのですが、11月になって日経新聞さんで電子版、日経MJ、本紙と立て続けに取り上げていただきました。その後、テレビ東京さんの経済ニュースでも取り上げていただいたりしたので、おかげさまで様々な方面からお問い合わせいただいている状況です。


製品について
━ ところでTravelers’ Mindで活用している観光アプリとは具体的にどのようなものですか。
「まっぷるリンク」という電子書籍アプリになります。昭文社の発行する出版物「まっぷるマガジン」に無料付帯されているものですが、これまでに大変多くのお客様に利用されています。出版物を購入された方の多くがアプリも合わせて利用されるので、ここから様々なデータが読み取れます。そういう意味では当社ならではのIoT(モノ=本のインターネット化)の事例と言えるかも知れません。このデータを活用して、観光領域における課題を解決できないかと思い、企画チームを立ち上げTravelers’ Mindというサービスを企画しました。


━ Travelers’ Mindとはどのようなサービスなのでしょうか。ネーミングの由来なども教えてください。
簡単に言うと、ダッシュボード型の分析ツールで旅行客の行動意向を様々な角度から分析・可視化することが出来ます。旅行客の行動意向とは、実際の行動ログではなく事前に訪問したいという意向度合いを分析するものです。アプリ利用者の観光スポットのブックマーク情報を活用しています。皆さんも旅行ガイドブックで行きたいスポットにチェックを付けたりすると思いますが、それと同じようにまっぷるリンク上でブックマークしておくことで、行こうと思っていたスポットを現地で簡単に呼び出すことが出来ます。
このブックマーク情報は旅行者が事前に行きたいと思うスポット情報になるので、この情報を分析することで訪問意向を読み取ることができます。このようなサービスなので旅行者意向をイメージしやすいネーミングとして、Travelers’(旅行客の)Mind(意向)という名前を付けました。


━ 位置情報ログではなく、あえてブックマーク情報を採用した理由はどんなところにあるのでしょうか。
ログ情報も取得することは出来ますが、既に携帯キャリアをはじめ、様々な企業が展開しているので、当社にしか取得できない情報を活用する方が、独自の強みを出せると考えたためです。実際、位置情報ログは訪問したという事実情報ですが、当日の天候などによって本当に行きたいところと実際に行ったところが異なる場合も多く、本当に人気のあるスポットを分析するにはブックマーク情報の方が適していると考えています。

━ Travelers’ Mindの具体的な分析機能を教えてください。
主な機能は下記のようになります。

行政マップ 人気スポットの保有状況が行政区画別に色分け表示されます。
スポットランキング 観光スポットを集客力順にランキング形式で表示されます。
季節別ランキング 季節別のスポット集客力の違いを比較閲覧できる機能です。
立ち寄りスポット スポット同士の相関性を地図上で把握できる機能です。
ジャンル別構成比 ジャンル別のスポット数と意向比率の度合いをグラフ表示します。
月別構成比 月別にどのジャンルの訪問意向が強いかを比較グラフで表示します。
施設詳細 スポット別意向量をタイル面積とグラフで視覚的に把握することが出来ます。

その他、全ての分析メニューや実際の分析事例を当社のラボサイトに掲載しておりますので、是非ご覧になっていただければと思います。
 MAPPLE LABS.(http://mapple.com/labs-travelersmind/)


━ 中でも特におすすめの機能がありましたら教えてください。
そうですね、もちろんどの分析機能も使って頂きたいですが、スポットランキングなどは非常に分かりやすいので、まず最初に使って頂きたいですね。自分の地域の中で人気のある観光スポットが分かるので、どこに人が集まっているのかが分かります。隣接する地域との違いも分かるので、自分の地域の何が弱くて何が強いかが見えて来ます。
一つの例で言うと、私の出身地でもある長崎県佐世保市の場合は、全国的にも著名なハウステンボスが大きく人気を集めていますが、九十九島にある観光施設も一定の人気を得ていることが分かりますし、ご当地グルメの「佐世保バーガー」のお店なども上位人気になっていますね。佐世保は魅力的な観光スポットが多くありますので、長崎県へお越しの際には是非お立ち寄りいただけると嬉しいです。

用途
━ 具体的な利用ユーザー様のイメージやTravelers’ Mindを使うことで見えて来る地域課題の具体例などがあれば教えてください。
やはり観光に関連する事業を行っている自治体様や企業様などは、どなたにも利用価値があると思います。例えば分かりやすく言うと、自治体様ではイベントを企画する際にどのようなイベントを開催したら良いか、どこをターゲットにプロモーションしたら良いかなどをこの分析結果を元に検討いただくことが出来ます。またコロナ前とコロナ後の旅行者意向の違いなども可視化出来るので、アフターコロナ対策などに活用いただくことも可能です。また旅行会社様やバス会社様であれば、季節に応じて人気のスポットを回るような観光周遊プランなどの企画に役立てたりすることも出来ると思います。


それと、見えて来る地域課題の具体例という点ですが、例えば流入人口であれば、市区町村別の人気スポット分布やスポットランキングを見ることで自分の地域を含めた周辺地域のどこに多く観光客が流入しているのかが分かります。自分の地域に著名観光スポットがあるに越したことは無いですが、近隣エリアに人が集まるスポットがあるなら、そこから自分の地域にどれだけ回遊してもらえるかがとても重要な視点です。
分かりやすい例で言うと、例えば「京都」は清水寺や金閣寺など誰もが知る著名スポットが点在する日本有数の観光地ですが、せっかく京都まで来たなら、少し足を伸ばして「琵琶湖まで行ってみよう」とか「彦根城も見てみたい」という人も多いと思います。つまり京都を中心とした観光圏が形成されており、その観光圏の中でどれだけ自分の地域に人を呼び寄せられるかが、観光活性化の上ではキーポイントになるということです。

また、滞在時間を増やすという点では、出来るだけ他の地域に流れないように終日滞在出来るような観光スポットを作ったり、そのスポットの認知度を高めるためにプロモーションを行う必要があります。消費を増やすという点では、特に飲食店やお土産屋さんなどの消費を底上げするスポットの開発や集客施策が必要になります。
Travelers’ Mindを活用することで、いま自分の地域においてどこに課題があるのか?、どこを伸ばす必要があるのか?と言ったことが自然と見えて来ますので、定量的なデータを用いた戦略立案がこれまでよりも簡単かつ具体的に出来るようになります。


今後
━ これからの展開構想を教えてください。
まずは全国の観光DMO様などにご利用いただき、観光戦略やプロモーション企画の立案等、地域の観光課題の解決に寄与して行きたいと思います。その後の展開としては、昭文社グループ全体のシナジーをより一層発揮させていきたいと思っています。
例えばTravelers’ Mindで分析した結果、飲食店の集客力に課題があるとなった場合、まっぷるリンクのアプリ上で特に飲食店を中心にプロモーションをかけることで、集客効果を見込める可能性があります。また、まっぷるリンクは位置情報を活用した広告配信などもできるので、今旅行に来ている人に対する広告配信などにも対応していますので、リアルタイム性のあるプロモーション施策を打つことが出来ます。同じグループ会社の昭文社との連携によって、このような観光活性化のトータルソリューションも実現出来るようになるものと考えています。


━ 最後に一言あれば。
コロナウィルスの感染拡大によって、全国の自治体様はもちろん、飲食店や旅行会社をはじめとした観光関連事業者様においては、甚大な影響を受けられている状況と思います。私たちマップルも観光事業に携わる企業として、この状況を打開すべくクラスター対策製品の提供を行うなどコロナウィルス感染拡大の収束とともに一刻も早い観光市場の回復の一助となるよう、日々努力を続けております。
今回ご紹介したTravelers’ Mindは、スタートしたばかりのサービスなのでまだまだ発展途上ではありますが、その分活用しやすい価格でご提供することが出来ますので、是非いろいろな自治体様、DMO様、観光関連事業者様にご活用いただき、微力ながら観光市場の再活性化と地方創生に貢献していきたいと思っています。
既に多くの自治体様や企業様からお問い合わせをいただいておりますが、出来る限り多くの観光地に貢献してまいりたいと思いますので、是非、今後も多くのご相談をいただければと思っております。

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