コラム

登山地図の定番『山と高原地図』の地図制作担当者が、実際の登山でガーミンのスマートウォッチを使ってみました。

いろいろな機能をもったガーミンのスマートウォッチ。
前回のコラムではその魅力と、登山者におなじみの『山と高原地図』(出版:株式会社昭文社)の魅力、さらに『山と高原地図』の情報がガーミンのスマートウォッチで使えることをご紹介しました。
>前回のコラム:登山地図の定番『山と高原地図』が『ガーミン』のスマートウォッチで使えるって知ってますか?

本コラムでは、長年『山と高原地図』に慣れ親しんだ地図制作担当者が、実際に山の上で使ってみて、感じたことをレビューします。

目次
● はじめに
● 基準としての山と高原地図
● 手軽に現在地特定
● 地形図にはない独自情報
● いろんな地図を携えて


はじめに

今回、ガーミンのスマートウォッチを実際に使ってみるために、長野県南佐久郡川上村にある「五郎山」へ向かいました。
五郎山は、国土地理院の地形図には徒歩道が掲載されていないけれど、山と高原地図では破線(難路)にてルートが採用されている山です。

基準としての山と高原地図

突然ですがここで一つ質問です。皆さんは山に登るときにどこから情報を入手していますか?
気心知れた山仲間の評判を聞いて行く山を決めることもあるでしょうし、山岳雑誌の写真に憧れて山を選ぶこともあるでしょう。最近では、他人が投稿サイトにアップした登山記録を参考にすることも多いものと思います。

このとき注意しないといけないのが、他人と自分の実力差です。
なぜなら、登山記録を書いている人がどんな実力の持ち主か分からないと、「簡単だった」、「難しかった」、と評価していたとしても自分にとってはどうなのかを見誤り、危険な目に遭う可能性があるからです。他人の登山記録を頼りに山に登り、思いのほか時間がかかったとか、あまり人が踏み入っていないコースでルートファインディングに苦労したなどという経験が皆さんにもあるのではないでしょうか。多くの人の登山記録が公開されて便利になった反面、情報を見極める力を付けていないと痛い目に遭う、そんな世の中になった気がします。

その点、山と高原地図は基準が一定しており安心です。
長年蓄積してきたノウハウをもとにコースを選び、山のプロによる実踏調査によってコースタイムを定めているため、初めてのコースでも、想定から大きく外れることはありません。コースタイムよりも早く歩けるか否かで、その日の体調のバロメーターとしても使えます。

山と高原地図のコースタイムは概ね以下の基準を元に設定されています(※アルプスと低山帯など山域により基準は異なる)。

① 40~60歳の登山経験者
② 2~5名のパーティー
③ 山小屋利用を前提とした装備
④ 夏山の晴天時

五郎山へは昭文社グループの先輩3名と向かいました。日本300名山を踏破したメンバーがその中にいて、「適度な岩場歩きが楽しめそうで、個人的にも行ってみたい」、とのことで行き先に決定。山と高原地図では難路、途中には危険個所マークや「ルート不明瞭」などもコメントもあり、それなりの覚悟をもって挑みました。

手軽に現在地特定

五郎山へ至る登山道は、山と高原地図で難路となっているだけあって、道が不明瞭なところが多く、赤テープや踏み跡を探しながらの登山となりました。荒れた林道を進み、登山口の標識がある地点からはいきなりの急登で、黙々と歩みを進めます。

現在地を把握して、地図上で次に出てくる分岐の方向や、地形の変化を先読みすることは、道迷いによる遭難防止に役立ちます。全行程のどれくらいまで進んだかが分かれば、心に余裕をもって山行を続けることもできます。あと残りわかずなので大休止していこう、次が山場なのでここで少し休んでいこう、というように柔軟な判断を下すことができます。

そうは言っても、辛い急登の途中や岩稜帯では、地図を広げて現在地を確認する余裕はありません。
そもそも、地形の特徴がない場所では、地図を広げてもどこだか分からないことがあります。登り始めの急坂はまさにそんな場所でした。そんなとき、スマートウォッチであれば、チラっと手元を見るだけで、現在地を確認することができます。この手軽さは、今回の山行での一番の収穫でした。

地形図にはない独自情報

ガーミンのスマートウォッチには、山と高原地図のデータ全63冊分を取り込むことができます。また、ガーミンが提供するExploreというアプリを使うと、スマホ上で選定したルートをスマートウォッチに転送し、ナビゲーションに用いることもできます。

実際に使ってみると、スマートウォッチで山と高原地図のルートを辿れるのはとても新鮮でした。ディスプレイは、色鮮やかでとてもきれい。ボタン操作だけでなくタッチ操作にも対応しており、直感的に表示画面を切り替えることができます。


今回のコースには、途中、マキヨセノ頭という地点があり、それ以降は岩稜帯となっています。漫然と進んでしまうと切り立った岩場に追い込まれるような箇所もあり、細心の注意が必要です。
山と高原地図では、そのような地点には「通過に注意を要する所」、「コースを誤り易い所」として注意喚起のマークを表示させています。このマークは、ガーミンのスマートウォッチでも表示されており、安全登山のために有効と考えられます。

地形図にない独自情報としては、その他にも展望箇所、お花畑、水場、駐車場などがあり、充実した登山のために活用することができます。

ガーミンのスマートウォッチで表示できる情報

特定個所/危険個所 約700か所
特定個所/注意個所 約800か所
特定個所/お花畑 約1,600か所
特定個所/展望箇所 約700か所
登山施設/山小屋 約800か所
登山施設/水場 約1,400か所
登山施設/キャンプ場 約1,000か所
登山施設/休憩所 約500か所
登山施設/駐車場 約3,000か所
登山施設/トイレ 約1,100か所
コメント/危険・注意個所 約5,200か所

いろんな地図を携えて

五郎山山頂からは、奥秩父の山並みを見渡すことができ、あの尾根を辿るとどこへつながっているのか、向こうに見えているピラミダルな山頂は何だ、としばらく山座同定をして過ごしました。紙の地図が得意とする、空間を俯瞰的に把握するこのような機能についても、ガーミンのスマートウォッチに搭載される日がいずれ来るのかも知れません。
そんな日を楽しみに、また次の山頂を目指します。

>ガーミンの日本登山地形図「TOPO10MPLUS」はこちら(外部サイト)
>今回使用したガーミンのスマートウォッチ「Forerunner 965」はこちら(外部サイト)


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