ここ数年、あらゆる「情報」の伝達手段が紙メディアからスマホ等のデジタルメディアに大きく転換されましたが、当社の主力製品である「地図」もその例外ではなく、その結果、地図は誰もが手軽に扱える日常生活に手放せない必需品になりました。
このように時代や環境が変化し、地図のつくり方やニーズも変遷した今、あらためて期待される地図の魅力や価値とはいったいどういうものか、そして地図の新たな使い道や隠れていた役割を探っていこうと、略地図作成ソフト「デフォルメマップ作成ツール」の企画・開発・サポートに携わる二人の担当者に話を聞きました。
目次
●「デフォルメマップ作成ツール」が製品化されてから約20年
●誰もが地図を見て、持ち歩いて、使う時代に
●ネットで見る地図にはない、カット図ならではの魅力とは
●カット図を作成するなら「デフォルメマップ作成ツール」で
●今後、さらに魅力あるカット図をつくるために
「デフォルメマップ作成ツール」が製品化されてから約20年
「デフォルメマップ作成ツール」が製品化されてから、およそ20年が経つそうですね。
お二人は、それぞれどのような形で本製品に携わっているのですか?
米山:「デフォルメマップ作成ツール」は、2000年頃に製品化されたソフトウェアなのですが、もともとは当時、マップルの地図データベースを使って地図配信サービスを手掛けていた日本コンピュータグラフィック社(現・昭文社クリエイティブ)が企画した製品でした。
当時、私は地図データベースの製造・サプライヤの立場として、地図情報が自動的に取捨選択・配置されるアルゴリズム設計のためのノウハウ提供と、見栄えの良い地図デザインの仕様策定・監修を行ないました。
私自身、それまでの約7年間、市販の地図帳や特注地図の編集者を務めていましたので、そこで培った経験とノウハウを本製品に注ぎ込みました。
安川: 私はかれこれ10年以上にわたって「デフォルメマップ作成ツール」のユーザーサポート業務を行なっています。本製品をご利用いただいている全国のユーザー様から、日々直接ご意見やご要望をお聞きする役割ですので、単にサポート業務を行なうだけでなく、ユーザー様から届いたさまざまな声を本製品に反映させるべく、製品企画も行なっています。
地図編集者のノウハウと、それを具現化するプログラムがまさに融合・結集した製品ということですね。
米山:はい、その通りです。地図の編集作業というのはその人の感性や判断といった点が重視されますが、そうした数値化しづらい部分を高度なプログラミングによってツール化した「デフォルメマップ作成ツール」はまさに画期的な製品と言えます。私自身、当初企画の持ち込みを受けた際、機械が編集作業なんかできるわけがないと思いました。しかしその先見性が良かったことを、20年にわたって今なお多くのユーザー様にご利用いただいていることが示しています。
安川:私が在籍していた日本コンピュータグラフィック社は、配信用地図の作成技術をもっていて、その技術を地図データベースからカット図を作成する受託業務で内部利用していました。その際に試行錯誤して得られたノウハウが本製品の初期開発の段階から詰め込まれていますので、当時の設計を大きく変更することなく、今なお、長い間、ユーザー様にご利用いただいています。
デフォルメマップ作成ツールにもそのノウハウが受け継がれている。
誰もが地図を見て、持ち歩いて、使う時代に
近年、世の中の一般的な地図の使われ方や活用のされ方など、地図を取り巻く環境が大きく変わったように思います。今では、簡単にスマホで地図を見ることが当たり前になりました。
米山:ほんのひと昔前までは、「方向音痴」「地図が読めない人」といった言葉がありましたが、今では、誰でもどこでもスマホで地図が見られます。そのため、自分が今どこにいるのか、向かいたい場所はどこにあるのか、どうやってそこに行ったらよいのかといったことが簡単にわかります。もはや「方向音痴」といった言葉は使われなくなりましたし、地図が読めなくても不都合がなくなりました。
逆に、紙地図を見る機会が減った今、「土地勘がある」「どこに行くにも迷わない」という人は、一部の地図好きな人を除いたらだいぶ少なくなってきたことでしょうし、あまり重宝されなくなってきたのかもしれません。
私自身もどこかに出かける際は、車ならカーナビ、歩きならスマホ、電車の移動では路線検索サイトで正確な時間を調べるなど、現代人らしくひととおりの最新テクノロジーを享受しています。
便利になって得るものがある一方で、使われなくなってしまうものもある、というのは世の常ですが、紙地図の良さと言うのもありますよね?
米山:そうですね。たしかに、誰もがパソコンやスマホで地図を利用するようになりましたし、GPSで現在地が捕捉できたり、様々な検索機能が備わったりしていますので非常に便利な時代になりました。
これまで紙の地図が担っていた役割の多くの部分がデジタルメディアに引き継がれていますが、その一方で、むしろデジタルメディアには担えない、紙地図ならではの魅力があります。そんな魅力ある地図を「過去の遺物」としてしまうのは非常に惜しいですから、是非みなさまにもその魅力を知っていただいて、どんどん利用して欲しいと思っています。
今日は「デフォルメマップ作成ツール」をテーマに話を聞いていますが、「紙地図の魅力」とどんな関係があるのでしょうか?
米山:「紙地図」と言ってしまうと「紙」に限定されてしまいますので、ここでは広い意味の言い方として、紙・デジタルのメディアを問わず「静的な地図」、つまり固定的な「カット図」と考えてください。 スマホで見る地図は、画面を指で操作すると上下左右(東西南北)に無限にスクロールしていきますし、拡大縮小も自由自在です。それがデジタルメディアで見る地図の特長で、いわば「動的な地図」と言えるものです。 一方、紙地図のように「あるエリア」を「特定の縮尺」で固定的に表わしたものが、「カット図」や「略地図」と呼ばれるものです。 スクロールも拡大縮小もできない「静的」で「固定的」な地図ですが、その分、「動的」な地図とは違った使い方や魅力があります。 「デフォルメマップ作成ツール」は、そうしたカット図や略地図を簡単・安価に作成するためのソフトウェア製品なのです。
ネットで見る地図にはない、カット図ならではの魅力とは
それでは、「デフォルメマップ作成ツール」のことを聞く前に、カット図ならではの魅力についてお聞きします。
米山:さきほども申しましたが、スマホなどで見るネット地図は、無限にスクロール、拡大縮小ができます。そのため、日本全国、同じ基準で作成された地図が、同じ設定の地図デザインで表示されます。現在の居場所を知ったり、目的地までの到達方法を調べたりするには十分なものですが、「それ以外の目的」で地図を使うには不十分な面があります。
その点、「カット図」なら、ひとつひとつ違った表現の地図を作成できますから、まさにその目的や地域の特色にあわせたオリジナルの地図を作成することができるのです。
「表現」というと『地図のデザイン』のことを指すものと解釈されてしまうことが多いと思いますが、「地図」においてはデザインだけではなく、限られた掲載スペースに地図をカットする「図取り」や、地図に収録する情報の「取捨選択」といったことも「表現」にあたります。
そうした点を工夫すればするほど地図の魅力を高めていけるのが「カット図」の特長で、見る人に対して「場所の情報や様子を伝える」のに最適な手段になるのです。
しかし、プロの地図編集者でなければ、カット図の魅力を高めることは難しいのでは?
米山:はい、たしかにそういう面もあります。ですが、「デフォルメマップ作成ツール」を使えば、それをサポートする機能が搭載されていますので、プロの地図編集者が作成する地図に匹敵するものを作成することができます。
操作もさほど難しくありませんし、さらに、自動で図取りを編集する機能があったり、一度に大量の地図が作成できたりしますので、「質」「量」を満たしたカット図を手軽に作成することができます。
例えば「図取り」は編集者にとって、ああでもない、こうでもないと最も苦心する作業です。
このツールを使えば、完成イメージを確認しながら何度でも試行錯誤できますので、プロの編集者以上に効率的に作業をすることができます。
また、地図に掲載する情報として、どれくらいの情報量が良いのか、またどの情報の優先度が高いのか、ということは地図制作のセオリーや編集者の感性で選ばれるものですが、情報の取捨選択をツールが自動的に行なってくれます。
冒頭でも申し上げましたように、情報を取捨選択するプログラムには編集者のノウハウが注ぎ込まれているのです。
カット図を作成するなら「デフォルメマップ作成ツール」で
「デフォルメマップ作成ツール」にはカット図を作成するのに必要な機能が盛り込まれているということですが、特長についてもう少し詳しく教えてください。
安川:先ほどの話にもあがりました図取りや情報の取捨選択についてですが、例えば、この学校は掲載したいなど、地図に掲載したい情報は、作り手によってさまざまです。本製品では、作り手が情報を追加した場合、自動で周辺の文字を再配置します。
情報量の取捨選択に加えて、文字の自動配置も行なうという点が大きな特長です。この機能により、地図編集のスキルを要する作業が誰でも簡単に、短時間で実行できます。
また、もう一点の特長として、自動で最寄駅を判定して図取りする機能があります。
カット図を作成する場合、最寄り施設として”駅”を含めることが多いですが、住所や緯度経度座標のリストがあれば、最寄駅を含めたカット図枠を最大100件自動で作成することが可能です。あとは自動で作成された枠に対して、微調整をするだけですので、短時間でスムーズに図取りを行なうことができるのです。
実際、本製品はどのようなユーザーに使われているのでしょうか?
安川:チラシやホームページ上での物件案内図として、不動産業種の方々に利用いただくことが多いです。物件案内図はその地域によってアピールしたいポイントが異なります。カット図はネットの地図とは異なり、作成の自由度が高いので、地域に特化したオリジナリティあふれる地図を作成していただくことが可能です。
また、「簡単にカット図を作成したい」、「コストや経費削減のため」という理由で導入される方も多くいらっしゃいますが、その点も「デフォルメマップ作成ツール」の大きな特長になります。
今後、さらに魅力あるカット図をつくるために
これからどのようにこのツールを進化させていきたいと考えていますか?
安川:まず、今の時代、インフラ環境が大きく変化していますので、そのような環境の変化にしっかり対応していくことが必要だと考えています。カット図の魅力以前に、最適な業務環境で作業していただくことも重要ですから、その点を改善していきたいです。
現在はDVDで提供するアプリとデータをPCにインストールしてご利用いただくスタイルですが、以前からオンラインで地図を作成できないか、というご要望を多くいただいていますので、できるだけ早くオンライン化が実現できるよう取り組んで行きたいと思います。
さらに機能面では、カット図をあらゆる用途で使用していただくためにも、どんな方でも使用できるよう、もっと機能を簡易的にする必要があると考えています。そのために、機能やユーザビリティのブラッシュアップだけでなく、操作方法を動画で発信したりなど、本製品を使用するハードルを下げていきたいです。
その上で、多くのユーザー様が、カット図ならではの良さを活かしたそれぞれの「オンリーワンの地図」を作成いただけるようにしたいです。情報の取捨選択の精度をさらにブラッシュアップしたり、より多様な地図デザインを実装したりするなど、社内外からの様々なご意見などを収集して機能改修していきたいと思います。
さいごに地図を作成する方々や利用する方々に向けて伝えたいことがあれば。
安川:ネット地図には、自分で地図を作成する手間がありませんし、自分の位置がすぐわかり、目的地にナビゲーションしてくれるという利点もあります。しかし、目的地にだけ意識が向いてしまい、行くまでの道のりにある様々な風景を見過ごしがちです。その一方、カット図は作成する際に、第三者にわかりやすく伝えるために、どんな情報を載せようか、色はどうしようかと模索します。そうすることで、その地域のことをもっと知ろうとし、隠れた魅力が掘り起こせるかもしれません。また、カット図を見た人が、実際にその地に行きたいと思うかもしれません。そんなことからも、カット図にはネット地図にはない魅力と価値が詰まっていると感じています。地図を目的地に行くだけの道具としてだけではなく、見方や使い方を変え、地域の新たな魅力を発信するものとしてお使いただきたいです。そのツールとして「デフォルメマップ作成ツール」をお使いいただければと思います。
米山:地図を取り巻く環境は常に変わっています。今では紙やスマホなど様々な媒体があり、それを使うユーザーや、使われ方も変化していますし、これからも変化し続けていくことでしょう。それぞれの目的にあった地図を作成することで、より便利で使いやすい、現地のことがよくわかる、見るだけで楽しくなる、そんな魅力ある地図づくりが実現できる環境を提供していきたいと思っています。時代にマッチした作成技術やノウハウをこれからも追及して、この「デフォルメマップ作成ツール」という製品に詰め込んでいきたいと思います。
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