Travelers’Mindを活用した観光分析の具体的事例
~新型コロナウィルス感染拡大前後の観光客の訪問意向動向を比較~

Travelers’Mind(トラベラーズマインド)は、昭文社のガイドブック「まっぷるマガジン」の読者に無料付帯される「まっぷるリンク」アプリから収集出来るデータから旅行予定者の興味関心を可視化するダッシュボード型の観光データ分析ツールです。
下記10種類の分析メニューから構成されています。

 

01_行政マップ :集客力のあるスポットの分布が行政区画別に色分け表示されます。
02_スポットマップ :観光スポットの分布図です。様々な絞込み表示が可能です。
03_スポットランキング :観光スポットを集客力順にランキング形式で表示されます。
04_季節別マップ :季節ごとの集客力の違いを地図上で比較閲覧できる機能です。
05_季節別ランキング :季節別のスポット集客力の違いを比較閲覧できる機能です。
06_立ち寄りスポット概要 :スポット同士の相関性を地図上で把握できる機能です。
07_立ち寄りスポット詳細 :スポット同士の相関性をより詳細に把握できる機能です。
08_ジャンル別構成比 :ジャンル別のスポット数と意向比率の度合いをグラフ表示します。
09_月別構成比 :月別にどのジャンルの訪問意向が強いかをグラフで表示します。
10_施設詳細 :スポット別意向量をタイル面積とグラフで視覚的に把握することが出来ます。

※TravelersʼMind(トラベラーズマインド)の詳細はこちらをご確認ください。

MAPPLE LABSでは、上記の分析メニューから「01_行政マップ」、「02_スポットマップ」、「03_スポットランキング」、「10_施設詳細」を使い、首都圏周辺での2019年7~9月と2020年7~9月の傾向を確認することで、新型コロナウィルス感染拡大前後の観光客の訪問意向の状況を比較してみます。

 目次 
行政マップを使った首都圏における市区町村別の傾向把握
スポットマップを使った埼玉県のスポット別の傾向把握
スポットランキングを使った埼玉県内の訪問意向上位スポットの傾向把握
施設詳細を使ったエリア内の詳細傾向把握
Travelers’Mind(トラベラーズマインド)の特長



行政マップを使った首都圏における市区町村別の傾向把握

~GoToトラベルキャンペーンの効果として横浜市、鎌倉市、箱根町への訪問意向が顕著~

まず「行政マップ分析」を使い、自治体別の観光資源とスポットの閲覧・ブックマークの量の傾向を地図上で確認してみます。

「行政マップ分析」メニューは、上下2つの地図から構成されます。上段にある「主目的エリアマップ」は、旅行の主目的となる著名観光スポットの保有数、下段にある「訪問意向マップ」はまっぷるリンクが保有する全ての観光スポットの保有数を集計し、訪問意向の強弱によって各行政単位でランク別に色分け表示されています。集計量が多いほど地図上では赤みが強く表示されています。
この2つのマップをそれぞれ操作し、東京を中心とするほぼ同じ範囲を表示してみます。
図(1)は2019年7月~9月までの色分け表示。図(2)は2020年7月~9月の色分け表示となっています。

←図1  図2→

2つを地図を比較すると訪問意向マップの色が大きく変わっています。2019年7~9月では多くの市区町村で訪問意向が確認出来ますが、2020年7~9月の時点で首都圏でAランクを維持している市区町村は神奈川県横浜市中区、鎌倉市、箱根町に限られます。これによってGoToトラベルキャンペーン後も首都圏を訪問する遠距離の旅行者数がそれほど回復していないこと、また、20年10月1日まで東京都がGoToトラベルキャンペーンの対象から外れていた影響が顕著に表れていることが分かります。


スポットマップを使った埼玉県のスポット別の傾向把握

~コロナ禍では自然が豊かなエリアへの訪問意向や自動車移動が顕著に~

コロナ禍において“どのスポットへの訪問意向が強いのか”を見るため、「スポットマップ」の分析メニューを使いスポット単位での傾向を埼玉県を例にとって詳しく見ていきます。

スポットマップは地図上に観光スポットをプロットし、訪問意向の数量をマークの大きさで、ジャンルを色で表示しています。観光スポットのジャンル色分けは共通して以下の凡例に従っています。

まずは、埼玉県の2019年7月から9月の観光スポットの分布を表示します。(図3)

図3

 

次に2020年7月から9月に集計期間を切り替える(図4)と、明らかな西高東低の傾向が現れます。これは、コロナ後の旅行で自然が豊かなエリアが好まれ、都心部を回避する傾向の表れと考えられます。他には県の中央に近い川越市も狭域ではありますが一定の注目を集めています。

図4

 

また、凡例から交通を選択すると、地図上には交通ジャンルの観光スポットが強調表示されます(図5)。他のジャンルに比べてマークの大きさが一定であることから、2020年7月から9月の間も、「道の駅」や「サービスエリア」など自動車での訪問が前提となる観光スポットは一定の注目を集めていたことが読み取れます。裏を返すと、公共交通による移動を避け、自動車による観光を計画する人が多かったとも言えるでしょう。

図5


スポットランキングを使った埼玉県内の訪問意向上位スポットの傾向把握

~コロナ禍では日帰り入浴施設や屋内型観光施設を回避する傾向に~

「スポットランキング」では上位の観光スポットの把握と分布を確認できますので、2つの時期の上位の観光スポットの傾向を見てみます。

まず集計期間を2019年7月から9月に設定すると、上段の「スポットランキング」に期間が反映されます。そこでランキング上位100件を選択すると、下段の「スポットマップ」には選択した観光スポットだけが表示されます。(図6)

図6

 

次に集計期間を2020年7月から9月に変更して同様に上位100件を選択すると、地図に大幅な相違が現れます(図7)。2019年7月から9月の上位には緑色の宿泊・温泉ジャンルの観光スポットが多く含まれていましたが、2020年7月から9月に切り替えると、それらの多くがスポットマップ上から消えています。人気施設の多くが日帰り入浴施設であることから、コロナ後の観光行動の対象から外れたものと見られます。また、全国的に著名な観光スポット「鉄道博物館」も地図から消えており、屋内施設回避の傾向が見て取れます。

図7

観光の集客にあたっては核となる観光スポットが重要になります。新型コロナの影響は観光行動の量的変化とともに、行先や立ち寄る観光スポットの選択にまで影響を及ぼしていることが明確に分かります。さらに、これらは報道や肌感でも感じられるところですが、具体的に周囲で何が起きているかを広く俯瞰して把握することは極めて難しいと言えます。Travelers’Mind(トラベラーズマインド)は、これらをタビマエの興味関心の変化として捉えられ、かつ、誰にでも分かる形でご提示できることが大きな特長となっています。


施設詳細を使ったエリア内の詳細傾向把握

~埼玉県内の訪問意向はショッピングよりもグルメを重視する傾向に~

ここまでは行政を跨った傾向把握の事例を見て来ましたが、ここからは都道府県、市区町村のエリア内での傾向の変化を見てみます。

エリア内での傾向を把握するには「施設詳細」という分析メニューが適しています。「施設詳細」は上段の「スポットタイル」がスポット、ジャンル別の訪問意向量を面積で表しており、下段の「月別意向量」は都道府県または市区町村単位で集計した月別の構成比グラフとなっています。スポットタイルのタイルはそれぞれが一つの観光スポットとなっており、選択すると月別意向量は選択した観光スポットの集計値に切り替わります。

 

図8

図9

上の2つの画像は「施設詳細」を埼玉県全体で表示し、2019年7月~9月(図8)と2020年7月~9月(図9)で集計した結果です。下の月別意向量はともに埼玉県全体の月別構成比となっております。一方、上のスポットタイルは集計期間の相違が反映されており、2019年と2020年を比較すると埼玉県全体の訪問意向に占める観光、ショッピング、グルメの比率が変わり、ショッピングが減少、グルメが増加しています。県全体の傾向として変化が起こっていることが分かります。

 

次に市レベルで見てみたいと思います。埼玉県内で観光地として人気の川越市を例に2019年7~9月(図10)と2020年7~9月(図11)の傾向を見てみます。

図10

図11

月別意向量に示される通り、量的には大きな差が出ています。しかし、スポットタイルを比較する限り、ショッピング、グルメ、観光という興味関心の割合は大きく変わっていません。つまり、量的な減少はあっても、訪問客が期待する体験に大きな変化はないと言えます。

 

同様に秩父市も2019年(図12)と2020年(図13)を比較してみましょう。

図12

図13

こちらも観光、グルメが強い点では2019年と2020年の差はありません。しかし、2019年に比べて2020年はグルメの占める割合が大きくなっており、観光行動にやや変化が見られます。この変化が今後も継続するか、それとも一過性で終わるのかは注意しなくてはなりません。なぜなら、これまで通りのプロモーションがターゲットの興味関心から外れてしまう可能性があるからです。Travelers’Mind(トラベラーズマインド)では年に4回、季節ごとにデータ更新を行うため、別途調査などを行わなくてもこの変化を把握できます。

 

最後に、川越市と秩父市の比較を確認しておきます。市区町村の絞り込みで川越市と秩父市だけにチェックを入れると、表示がこのように切り替わります。(図14)

図14

上のスポットタイルは両市のスポットを統合しており、両市を合わせた際の訪問意向量の構成を把握できます。下の月別意向量は両市の合計を100とした際の構成比に切り替わり、規模の比較ができます。2019年には大きな差があった両市ですが、2020年は新型コロナの影響もあって近い規模となっていることが分かります。この機能により、複数エリアの比較を簡単に行い、近隣のエリアや類似するエリアで同様の傾向にあるかを定点観測できます。