地図の雑学|大久野島(広島県)~うさぎの楽園にそびえる日本一の送電鉄塔~

2026年05月08日配信

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MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.97  大久野島(広島県)
~うさぎの楽園にそびえる日本一の送電鉄塔~

広島県竹原市の忠海港からフェリーに揺られること約15分。瀬戸内海の穏やかな海に浮かぶ大久野島は、現在「うさぎの島」として多くの観光客で賑わう人気スポットです。島内に足を踏み入れれば、いたるところで野生のうさぎたちが自由に駆け回り、訪れる人々を温かく迎えてくれます。

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しかし、穏やかな時間が流れるこの島には「地図から消されていた」悲しい過去があります。第二次世界大戦中、大久野島は化学兵器である毒ガスの製造拠点となっていました。当時、毒ガス製造は国家機密であり、その存在を徹底的に秘匿するために、地図から抹消されていたのです。
現在も島内を散策すれば、砲台跡や毒ガスの貯蔵庫跡、発電所跡といった戦争遺産が当時の面影を色濃く残していることがわかります。島内の「毒ガス資料館」では、製造に携わった人々の記憶や、戦争に翻弄された島の様子が展示されており、当時の教訓を今に伝えています。

大久野島_筆図

こうした歴史を持つ大久野島ですが、現在は数百羽のうさぎが生息する「うさぎの楽園」として親しまれています。このうさぎたちは、1970年代に小学校で飼育されていた数羽が島に放たれ、野生化して繁殖したものだといわれています。のちにSNS等を通じてその愛くるしい姿が広く紹介されたことで、世界中から注目を集める場所となりました。

大鉄塔の筆

そんな大久野島を地図で眺めてみると、不思議な筆(土地)を見つけることができます。島を縦断するように、正方形の小さな筆(土地)が3つ点在しているのです。そのうちの一つに注目すると、「大鉄塔」という文字が記されており、空中写真で詳しく確認すると、そこには巨大な鉄塔がそびえ立っています。

大久野島_筆のみMAPPLE法務局地図ビューアの任意座標の表示機能より

この鉄塔は、本州と愛媛県の大三島を結ぶ送電線「中国電力大三島支線」を支えるためのものです。その高さは226メートルに及び、送電鉄塔としては日本一の高さを誇ります。
なぜ、これほどの高さが必要だったのでしょうか。瀬戸内海の島々を繋ぐ送電線は、海を越えるために長いスパン(径間)を渡さなければなりません。また、荒天や強風に耐える強度に加え、送電線がたわんだ状態でも、その下を行き交う船舶が安全に航行できなければなりません。これらの条件を満たすため設計された結果、この巨大な鉄塔が誕生しました。

大鉄塔(空中写真)

大鉄塔(空中写真2)

残りの2つの筆(土地)についても、同様に鉄塔が建っていることが確認できます。

「地図から消された」悲しい歴史を持ち、現在は「うさぎの楽園」として親しまれる大久野島。島にある3つの小さな筆(土地)は、瀬戸内海の島々を結び、地域の生活を支える巨大な送電鉄塔の筆(土地)でした。 

出典:
国土地理院ウェブサイト「地理院地図(電子国土Web)データ」(国土地理院)をもとに加工して作成
国土地理院撮影の空中写真(2020年撮影)
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成


 

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