2025年12月26日配信
運送・物流・送迎において、新人ドライバーの教育は安全性と品質を担保するための最重要課題です。中でも、先輩ドライバーが助手席に同乗してマンツーマンで指導する「横のり(横乗り)」は、業界特有の伝統的な教育手法です。

しかし、現場からは「横のりがしんどい」「気まずい」「いつまで続くのか」といった切実な声が後を絶ちません。管理者様にとっても、2024年問題による労働時間の制約や人手不足の中で、「新人教育に十分な時間を割けない」という悩みは深刻です。
本コラムでは、「横のり」という業務の実態を深掘りしつつ、システム活用によって精神的負担とコストを同時に削減する「新しい教育のカタチ」について考えてみたいと思います。
業界未経験の方や、これからドライバーを目指す方のために解説すると、「横のり(横乗り)」とは、新人が独り立ちする前に一定期間、ベテラン指導員が同乗して行うOJT研修のことです。運送・物流・送迎においては、大型トラックやバス、軽貨物から福祉・介護車両まで、あるいは長距離輸送から自動販売機の補充巡回まで、多くの現場で必須の工程とされています。
企業や車種、経験値によって異なりますが、2週間〜1ヶ月、未経験者の場合は3ヶ月程度続くことも珍しくありません。会社からの「見極め(合格)」が出るまで続くため、「いつ終わるのかわからない」という不安がつきまとうこともあります。
単に車の運転技術だけでなく、多岐にわたる業務を学びます。
運転技能: 車体感覚、ブレーキ操作、バック駐車、燃費走行など。
ルート知識: 配送先への道順、トラックが通れる道、渋滞回避ルート。
納品ルール: 入構手続き、駐車場所、検品方法、挨拶、伝票処理。
荷扱い: 積み込み・荷降ろしのコツ、荷崩れ防止(ラッシング)の手順。
これら全てを「口頭」と「実演」で伝承するのが、従来の横のりスタイルです。
多くのドライバーが検索窓に「横のり しんどい」「横のり 辞めたい」と打ち込む背景には、単なる業務量以上の「精神的な負担」があります。狭いトラックのキャビンという閉鎖空間に、長時間二人きりで過ごすことによるストレスは計り知れません。
新人ドライバー側のストレス:
「気まずさと焦り」
「監視」される緊張感と、車内の「無言」
逃げ場のない密室で、一挙手一投足を監視されるとなると、緊張感は相当なものでしょう。話題がなく無言が続く時間があれば気まずく、その空間に耐えられない、無理に会話を探すのが苦痛だという声も多く聞かれます。
「ルートが覚えられない」焦りと恐怖
初めての道を運転しながら覚えるのは至難の業です。「さっき教えただろ」と怒られるのではないかという恐怖や、運転中でメモも取れない焦りからパニックになり、余計にミスを重ねる悪循環に陥ることもあるようです。
質問しづらい空気と「見て覚えろ」の重圧
わからないことがあっても、先輩の機嫌を伺って質問を躊躇してしまうケースです。「仕事は見て盗め」という職人気質な指導スタイルだと、馴染めず、疑問を解消できないまま不安な運転を続けざるを得ないことがストレスになります。
指導役(ベテラン)側のストレス:
「責任と疲労」
助手席で襲ってくる「眠気」への不安
自分でハンドルを握っていれば起こらないものの、助手席に座っていると襲ってくるかもしれない「眠い」という感覚。万が一「寝る」(居眠り)ようなことがあってはならないというプレッシャーは、想像以上のストレスになり得ます。
「教え方の迷い」とハラスメントへの懸念
感覚的なコツをうまく言語化できず、伝わらないもどかしさから指導に迷いが生じがちです。熱心さのあまり口調が厳しくなり、新人から「うざい」「きつい」と思われていないか、パワハラになっていないかと不安を抱えている方も少なくありません。
「ブレーキがない」恐怖と仕事の遅れ
助手席にはブレーキがなく、とっさの回避ができない恐怖からくる精神的な疲労は、自分で運転する以上だとも言われます。また、指導により自分の仕事が進まない焦りを感じることもあるようです。
このように、横のり期間が長引けば長引くほど、人間関係の摩耗による早期離職のリスクが高まります。
せっかく採用したドライバーが、独り立ちする前に「横のりがつらくて辞めたい」となってしまっては、採用コストも教育コストも水の泡です。
重要なのは、「人間が教えるべきこと」と「ツールに任せること」を切り分けることです。

特に難しい「道順の指導」や「細かいルールの暗記」をシステムが代替できれば、横のり期間が短縮されるだけでなく、車内の会話は最低限の業務連絡で済み、お互いの精神的負担は劇的に軽減されます。
もし、システムを活用して教育を効率化し、横のり期間を短縮できた場合、どれくらいのインパクトがあるのでしょうか。
例えば、新人ドライバー1名を一人前に育てるために、従来「1ヶ月(22営業日)」の横のりを行っていたとします。
これをシステム活用により、安全確認などの重点指導のみに絞り、「2週間(11営業日)」に短縮できた場合をシミュレーションします。

<削減できる人件費の試算例>
前提条件:指導役(ベテラン)の日当換算コスト:20,000円(給与+法定福利費等)
短縮日数:11日間(22日→11日)
削減効果:20,000円 × 11日 = 220,000円
新人1名あたり、約22万円のコスト削減が見込めます。年間で5名の新人を採用する場合、100万円以上のコスト削減につながる計算です。また、早期に独り立ちすることで、新人が稼働できる日数が増え、会社の売上にも貢献します。
横のり期間が長引く最大の要因は、「道を覚えるのに時間がかかる」ことです。
逆に言えば、ルート案内や場所の共有をデジタルに任せることができれば、人間は運転技術や現場対応の指導のみに集中でき、早期の独り立ちが可能になります。
そこで有効なのが、業務用のカーナビゲーションシステムです。しかし、一般的なスマホアプリや乗用車用ナビでは、トラックが通れない道を案内されたり、納品口の指定ができなかったりと、プロの現場では不十分な場合があります。
マップルの『ルートナビゲータープラス』は、物流・運送・送迎に最適化された業務支援システムです。新人教育における「デジタル指導役」として、以下の特長で横のりの負担を軽減します。
◎ 気遣いは不要、焦らせない
システムは何度同じ道を通っても、冷静に正確なルートを案内し続けます。人間関係のストレスを感じることなく、ドライバーは運転に集中できます。
◎ ベテランの走行軌跡を「お手本ルート」として資産化
Web上の地図でコースを描く方法に加え、ベテランが実際に走行したログをそのまま案内ルートとして登録可能です。熟練者ならではの効率的なコース取りをシステムが完全再現し、新人を導きます。コース情報は会社の「資産」として残り続けるため、人が入れ替わっても教育の質を維持できます。
◎ 納品口や駐車位置を「画像とメモ」でピンポイント共有
地図住所だけでは分からない裏門や安全な停車位置を、Webや現地で登録し、写真やコメントを残せます。「現場の正解」がピンポイントで表示されるため、迷いや事故のリスクを防ぎます。
◎ 大型車規制を考慮したルート探索
車高・車幅・重量規制を考慮したルートを引くため、新人が「この道を通れるか?」と迷う時間をなくし、事故リスクを低減します。
これにより、ベテランが隣にいなくても、システムが正確なルートと注意点を案内してくれます。いわば、「ナビの中にベテランドライバーがいる」状態を作り出すことで、安心して新人を送り出すことができるのです。

「横のり」は大切な文化ですが、すべてをアナログで行う必要はありません。ルートや場所の知識をシステムに蓄積(資産化)することで、教育コストを下げながら、配送品質を平準化することが可能です。
「横のりがしんどい」という現場の声に耳を傾け、人とデジタルが分担する効率的な教育を始めてみませんか?
新人教育の負担にお悩みの方は、ぜひ一度『ルートナビゲータープラス』の導入をご検討ください。