MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。
◆No.69 水尻池(鳥取県)~池に残る不思議な「筆」の正体とは?~
鳥取砂丘で有名な鳥取県鳥取市の西には、神話「因幡の白うさぎ」の舞台として知られる白兎海岸が広がります。その近くには、水面に筆(土地)が設定された珍しい水尻池があります。実は、この水尻池の筆(土地)には、かつて季節的潟湖(きせつてきせきこ)であった水尻池の歴史が隠されています。
白兎海岸
潟湖は、別名ラグーンとも呼ばれる地形のことです。潟湖とは、湾など海の一部が砂嘴(さし)や沿岸州などの発達によって外海と切り離されて形成された、水深の浅い湖沼や池を指します。そして、水尻池のような季節的潟湖とは、潟湖の地形を活用して、春から秋にかけて水を抜き水田として利用し、冬になると再び水を満たして元の姿である潟湖に戻るものです。
水尻池の筆(土地)は、かつてこの池が季節的潟湖であったことを示しています。昔、水尻池一帯は日本海と繋がった湾でしたが、砂丘が発達したことで湾が塞がれ、池が形成されました。かつては漁業を営む漁村があったようですが、大正時代に大規模な干拓工事が行われ、広大な水田が誕生しました。
筆(土地)には水田の特徴が良く残っている
しかし、干拓された水尻池は標高が低く、池に水が流れ込んできました。そこで、水位の上昇を防ぐためにトンネルを掘り、排水ポンプを用いて日本海へ排水を行っていました。このような困難を乗り越えながら稲作が行われていた水尻池ですが、1971年(昭和46年)から始まった減反政策によって、水田が放棄され始めました。
そして、減反政策の影響による稲作農家の減少で、水尻池での稲作は終焉を迎えました。現在の水尻池は水が満たされ、干拓前の姿に戻っています。しかし、筆(土地)の形状には水田の特徴が残っており、季節的潟湖であった時代の面影を今に伝えています。
現在の水尻池と筆(土地)の様子
ところで、現在の水尻池は水で満たされていますが、土地の所有権は、放棄されていないようです。そのため地目変更を行い、池の水を排水すれば、再び稲作ができるようになるのだとか。そんな水尻池は、山陰海岸ジオパークの見どころの一つとして、マガモやコハクチョウが飛来する水鳥たちのオアシスになっています。また、水辺は水鳥を撮影する多くのカメラマンや散策する人々の憩いの場になっています。
出典:
国土地理院ウェブサイト「地理院地図(電子国土Web)データ」(国土地理院)をもとに加工して作成
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成
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