MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。
◆No.65 角海浜(新潟県)~原子力発電所の建設計画に揺れた集落の筆~
新潟県新潟市西蒲区の海岸線を走る国道402号が突然カーブを描いて内陸へ向かい、再び海沿いへ戻る「コ」の字のような区間があります。海岸線を進むことなく迂回するこの場所には角海浜という集落がありました。この地域を地図で見ると集落のような筆(土地)が設定されています。
角海浜は坂口安吾が著した安吾新日本風土記に「角海」という地名で登場し、「越後の毒消し」と呼ばれる薬の発祥地として記されています。江戸時代に称名寺に伝わる薬を行商用の薬として販売したことで、角海の名は全国に知れ渡るようになりました。最盛期には約200軒の民家が立ち並ぶ集落を形成していたそうです。しかし、角海浜を取り巻く自然環境は大変厳しく、日本海の荒波による侵食などによって集落は徐々に縮小していきました。
「角海浜集落」は赤丸の位置にあった
地図を見ると角海浜を迂回するように国道が走っています。このようなルートを通るきっかけとなったのは、1971年(昭和46年)に原子力発電所の立地候補地としての話が持ち上ったことでした。計画当初は、自治体も用地取得に前向きでした。しかし、住民投票によって反対され、その後、住民訴訟を経て2003年(平成15年)に計画は撤回されました。 こうして原子力発電所の建設計画は撤回されましたが、角海浜に住む人々は計画が持ち上がって間もなく集落を離れていき、1974年(昭和49年)には集落に住む人はいなくなりました。
角海浜を年代ごとの空中写真で見ると、1961年~1969年では集落が形成され、道路のルートは日本海に面した集落の中を走っています。しかし、1974年~1978年になると、集落の建物は無くなり更地になっています。海岸線を走っていた道路は集落を迂回するルートに変更されています。そして、2020年には集落のあった場所は原野になり集落の痕跡は見当たりません。
現在、角海浜の集落があった場所へ繋がる道は崩落によって通行困難であるため、角海浜の痕跡を辿ることはできません。しかし、筆(土地)には角海浜に集落があった時代の姿が残されています。
出典:国土地理院ウェブサイト「地理院地図(電子国土Web)データ」(国土地理院)をもとに加工して作成
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成
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