コラム

地図の雑学|三池島・初島(福岡県)~有明海に浮かぶ円い筆は炭鉱の島~

MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.40 三池島・初島(福岡県)~有明海に浮かぶ円い筆は炭鉱の島~

福岡県南部に位置し、熊本県と隣接する大牟田市は石炭産業で発展した町です。特に三池炭鉱は産業の中心として町の発展を支えました。三池炭鉱が閉山した今では一部の炭鉱関連施設が世界文化遺産として登録されています。

地図を見ると大牟田市の沖合の有明海に三池島と初島という2つの小さな島を見つけることができます。地図を拡大すると三池島は円形の筆(土地)、初島は円形の一部が欠けた筆(土地)になっています。筆(土地)の形状は島の形状と合致しているので、島の形がそのまま筆(土地)として設定されているようです。

この場所をMAPPLE法務局地図ビューアで見てみる

この有明海に浮かぶ不思議な円形の筆(土地)を持つ2つの島は、海の下にある三池炭鉱の坑道のために造られた人工島です。地図では確認することはできませんが、石炭の採掘は大牟田沖でも行われており、有明海の下には無数の炭鉱用坑道が走っています。炭鉱では地中にある坑道に常に新鮮な空気を取り入れ、汚れた空気を排出する必要があります。また、坑道は温度が高いため、温度を下げる必要がありました。そこで、酸素の供給と坑道の温度を下げることを目的とした、換気用立坑を海上に造ることになり、三池島と初島の2つの人工島が誕生しました。

三池島

初島

大牟田市や隣接する地域は、炭鉱によって多くの人で賑わいを見せ、地域で採掘された石炭は、日本の産業に大きな影響を与えることになりました。特に三池炭鉱は日本有数の出炭量を誇り、日本の産業を支えた近代化の象徴になっています。海上に造られた三池島と初島は、その後、三池炭鉱の閉山までその役割を果たし続けました。閉山後、三池島は環境省レッドリストの絶滅危惧Ⅱ類に指定されているベニアジサシの繁殖地であることが確認され、本来の役割を終えた人工島は新たな役割を担っています。

出典:
国土地理院撮影の空中写真(2021年撮影)
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成

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