
編集済オープンデータ(無料)
ハザード情報/地価公示・調査/都市計画決定情報を、見やすく編集・加工して配布しています。
2024年08月28日配信
自治体が配布するハザードマップの多くは、自分の市区町村しか収録していません。拠点周辺だけを表示すると、こうなります。
区域内にほとんど着色がなく、災害のイメージが湧きません。ところが同じ場所を、都心全域を含む広域で表示するとこう変わります。
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各地に、拠点周辺の地図ではわからなかった危険なエリアが点在していることがわかります。東側の江東区・江戸川区の大半が着色されているのは浸水想定区域に該当するためで、北側の文京区や南側の港区には急傾斜地の崩壊の危険性がある箇所が点在しています。
単純に見れば、この拠点は他エリアに比べて相対的に危険度は低い。しかしそれは「周囲と比べてどうか」を見て初めて言えることです。通勤経路、配送ルート、避難先、代替拠点——拠点の外側の情報が必要になる場面のほうが、実際の業務では多いのです。
「ハザードマップ」と一括りに呼んでいますが、実際には根拠法令の異なる複数の区域図の集合です。洪水は水防法、土砂災害は土砂災害防止法、津波は津波防災地域づくり法——というように、それぞれ別の枠組みで指定されています。つまりある区域図で白かったからといって、別の区域図でも白いとは限りません。
2026年8月13日の記録的な大雨(令和8年8月千葉豪雨)について、ウェザーニューズが同社アプリに寄せられた被害報告を分析しています。被害を示すキーワードを含む投稿のうち、低位地帯または浸水想定区域の外から寄せられたものが55.7%にのぼったという結果でした。区域図に着色されていない場所でも、浸水は起こり得ます。
参照:ウェザーニューズ「【令和8年8月千葉豪雨】 2人に1人が浸水想定区域“外”で被災か」(2026年8月14日)https://jp.weathernews.com/news/57121
国土交通省の「国土数値情報」で全国分が整備されている、事業所のリスク評価に使える主な区域は次のとおりです。
| 区域 | 主な根拠 | 何がわかるか |
| 洪水浸水想定区域 | 水防法 | 河川の氾濫(外水)による浸水範囲・浸水深 |
| 土砂災害警戒区域 | 土砂災害防止法 | 土石流・急傾斜地の崩壊・地すべりの警戒区域 |
| 津波浸水想定 | 津波防災地域づくり法 | 最大クラスの津波による浸水範囲・浸水深 |
| 高潮浸水想定区域 | 水防法 | 高潮による浸水範囲・浸水深 |
| 急傾斜地崩壊危険区域 | 急傾斜地法 | がけ崩れのおそれがあるとして指定された区域 |
| 地すべり防止区域 | 地すべり等防止法 | 地すべりを防止する必要がある区域 |
| 災害危険区域 | 建築基準法 | 条例で建築が制限されている区域 |
なお都道府県によって整備状況は異なります。高潮浸水想定区域は内陸県では該当自体がありません。「データが無い=安全」ではなく「そもそも指定対象でない」場合がある点にご注意ください。
このほか参考情報として、大規模盛土造成地のデータも整備されています。これは区域指定ではなく、地震時の変動について安全性を確認すべき箇所を抽出したものです(後述)。
国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」には、災害リスク情報を重ねて表示できる「重ねるハザードマップ」と、市区町村が作成したハザードマップにたどれる「わがまちハザードマップ」があります。閲覧ソフトも登録も不要で、全国どこでもすぐに見られます。手軽さという点では、他のどの方法にも及びません。拠点が1〜数か所であれば、この方法で十分です。
ただし、この方法は「見る」ためのものです。確認した結果を地図に書き込んだり、自社の拠点情報を重ねたりすることはできません。そのため記録に残すには画面キャプチャを別途まとめることになり、全拠点を横並びで比較した一覧表にもなりません。
「重ねるハザードマップ」の元になっているデータの多くは、国土交通省の国土数値情報ダウンロードサイトで無償公開されています。都道府県単位でダウンロードでき、手元のソフトに取り込めば全拠点を一度に重ねて見ることができます。
参照:国土数値情報ダウンロードサイト https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/
ただしここにも壁があります。オープンデータはGISで自由に編集加工できるよう設計されているため、属性名や現象種別が番号・コードで整備されているのです。そのまま取り込むと、どのフォルダーが何のデータか分からない、クリックしても属性が番号で表示され内容が読み取れない、色分けの意味が分からない、という状態になります。「データはあるのに、読めない」というのが、この方法でつまずく典型的な場面です。
拠点リスト(住所または緯度経度を含むCSV/Excel)をあわせて取り込めば、全拠点とハザード情報を同じ地図上に重ねて確認できます。インストール型のため、通信環境がなくても地図表示・住所検索・ルート作成が可能です。
| 方法 | 費用 | (参考:拠点数の目安) | 向いている場面 |
| 方法1:重ねるハザードマップ | 無料 | 〜数か所 | まず今すぐ確認したい |
| 方法2:国土数値情報 | 無料 | 制限なし | 社内にGISを導入していて扱える人がいる |
| 方法3:編集済オープンデータ+スーパーマップル・デジタル | データは無料 | 数十〜 | 他の情報と重ねたい。書き込んで一覧表として残したい |
ここからが、地図を本業にしている会社としてお伝えしたい部分です。区域図に着色されていない場所でも起こり得ることが、いくつかあります。
洪水浸水想定区域が想定しているのは、主に河川の氾濫(外水氾濫)です。これに対し、下水道の排水能力を超えて雨水があふれる内水氾濫は、水防法第14条の2に基づく「雨水出水浸水想定区域」という別の図で示されます。国土交通省の作成マニュアルでは、内水による浸水は洪水と比べて区域も浸水深も小さいものの、発生頻度は高く市民生活・企業活動と密接に関わると位置づけられています。
国土数値情報にも「雨水出水(内水)浸水想定区域データ」(識別子A51)が整備されています。ただし、洪水浸水想定区域が全国整備であるのに対し、2026年8月時点で公開されているのは47都道府県中22都道府県分にとどまります。大阪・京都・静岡・新潟・熊本などは、そもそもデータがありません。さらに収録されている都道府県でも整備の濃淡があり、市区町村単位では数%とごく一部にとどまっていますが、今後は整備されていくかと推測されます。
実際の雨水出水(内水氾濫)浸水区域はこの雨水出水(内水)浸水想定区域よりも広い場合があります。
出典:国土数値情報ダウンロードサイト「雨水出水(内水)浸水想定区域データ」
つまり内水については、①そもそも拠点のある都道府県が整備対象とは限らない、②整備されていても実際の浸水域はより広い可能性がある、という二重の注意が必要です。拠点所在地の自治体サイトで個別に確認することをおすすめします。
台地を刻んだ谷状の地形は、周囲より低いため雨水が集まります。河川から離れていて洪水浸水想定区域の外であっても、内水によって浸水し得るのはこのためです。先ほど触れた千葉での被害についても、台地を浸食したくぼ地が広がる「谷津地形」の影響が指摘されています。
拠点の地形を確認するときは、区域図の着色だけでなく、周囲と比べて低いかどうかを地形図や標高で見てください。

谷や斜面を埋め立てて造成された土地は、地震時に変動が生じるおそれがあります。しかし造成後の地表面は平坦で、見ただけでは元の地形が分かりません。大規模盛土造成地のデータは編集済オープンデータに収録していますので、拠点が該当するかどうかを地図上で確認できます。
なお、大規模盛土造成地に該当することが、ただちに危険を意味するわけではありません。国土交通省は、大規模盛土造成地マップについて「安全性を確認すべき盛土を示したものであって、直ちに危険性のある盛土造成地を示したものではありません」としています。造成前後の地形図を重ね合わせておおよその位置と規模を抽出した第一次スクリーニングの結果であり、この後に造成年代の調査や地盤調査(第二次スクリーニング)を経て、初めて安全性が評価されます。実際、調査の結果、滑動崩落の懸念はないと判断された事例もあります。
拠点が該当した場合は、まず所在地の自治体に調査状況を確認するところから始めてください。
揺れやすさや活断層の情報は、国土数値情報のハザード系データには含まれません。防災科学技術研究所の地震ハザードステーション(J-SHIS)などで別途確認する必要があります。2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震(最大震度7)は日奈久断層帯の周辺で発生したもので、同じ地域では10年前の平成28年熊本地震も発生しています。
参照:地震ハザードステーション(J-SHIS)https://www.j-shis.bosai.go.jp/
調べただけでは、翌年また同じ作業をすることになります。拠点×区域のマトリクスとして残してください。
本稿では解説用に、架空の24拠点を持つ企業のダミーデータを用意しました。整理すると、24拠点のうち22拠点が何らかの区域に該当し、そのうち優先度を「高」とした拠点が4拠点という結果になりました。
一覧にすると、どの拠点から手をつけるか(対策予算の配分根拠)、どの災害を想定して訓練するか(拠点ごとに違ってよい)、代替拠点として指定してよいのはどこか(本社と同じリスクを持つ拠点は代替にならない)が決まります。事業継続力強化計画のリスク認識の欄も、この一覧があれば根拠を持って記載できます。
確認するときの注意
配布データも「重ねるハザードマップ」も、縮尺1/25,000相当の精度でおおよその位置を示すものです。ポリゴンの境界付近に拠点がある場合、実際には該当する/しないが逆になることがあります。綿密な災害・避難対策を計画する際は、区域に該当しない場合であっても、必ず所在自治体や所轄の建設・土木事務所に詳細な区域を確認してください。
また、自治体によっては、公表しているデータの利用や再配布に条件を設けている場合があります。社内での確認にとどまらず、印刷物やWebサイトに掲載する予定がある場合は、あわせてご確認ください。
Q 拠点が数か所しかありません。それでも地図ソフトは必要ですか。
A 数か所であれば「重ねるハザードマップ」で十分です。自社の拠点情報を重ねて見たい、確認した結果を書き込んで残したいといった必要が出てきたときに、方法3を検討してください。
Q 賃貸のオフィスや店舗でも、調べる意味はありますか。
A あります。建物の補強はできなくても、どの災害でどう動くかを決めておくこと、重要な設備や書類を上階に移すこと、代替拠点をどこにするかは借主の判断で決められます。移転や更新のタイミングでの立地選定にも使えます。
Q 「区域に該当しない」と出たら、対策は不要ですか。
A いいえ。内水氾濫や谷地形による浸水は区域図に現れないことがあります。また区域図は縮尺相当の精度なので、境界付近では判定が変わり得ます。加えて、自治体によっては情報の公開に制限を設けている場合があり、そもそもデータが出ていないために「該当なし」と表示されていることもあります。区域に該当しなかった場合でも、所在地の自治体の公表状況をあわせてご確認ください。
Q データはどのくらいの頻度で更新されますか。
A 区域の指定そのものは、河川の改修や想定の見直しにあわせて随時行われます。国土数値情報はそれを反映して年度ごとに更新されるため、少なくとも年に一度は最新版を確認することをおすすめします。当社が配布している編集済オープンデータも国土数値情報の更新にあわせて随時更新しており、出典と取得時期を明記していますので、ダウンロード時にご確認ください。
リスクの高い場所に事業所があるからといって、簡単に移転できるものではありません。だからこそ、まず自社のリスクを正確に認知することが、あらゆる対策の出発点になります。
そして「調べる」は一度で終わる作業ではありません。拠点は増減し、区域指定も更新されます。毎年繰り返せる形に仕組み化しておくことを、あわせておすすめします。