コラム

地図の雑学|小田城跡(茨城県)~城郭と城郭を貫く鉄道の筆~

MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.27 小田城跡(茨城県)~城郭と城郭を貫く鉄道の筆~

茨城県つくば市には城郭と鉄道が合わさった筆(土地)があります。

常陸国にあった小田城は、南北朝時代に北畠親房が南朝方の正統性を主張した「神皇正統記」を書いた場所として知られています。また、戦国時代には小田城の攻防戦による逸話から戦国最弱、あるいは常陸の不死鳥と呼ばれた小田氏治でも知られており、小田氏の祖先は鎌倉幕府の十三人の合議制メンバーであった八田知家とされています。現在、小田城跡では発掘調査が行われており、「小田城跡歴史ひろば」として整備されています。

この場所をMAPPLE法務局地図ビューアで見てみる

つくば市の小田城跡を地図で見ると、筆(土地)は本丸跡や曲輪、堀跡などに沿って設定されており、当時の城郭の姿が想像できるかのようです。古い空中写真を見ると、城跡周辺では土塁や堀に沿って農耕地が並んでおり、城郭由来の凹凸に合わせた土地利用がされていたことが伺えます。

城郭を斜めに貫く鉄道の筆

小田城跡(1987年~1990年)

一方この地域には、筑波鉄道筑波線という鉄道が走っていました 。筑波鉄道はJR土浦駅とJR岩瀬駅を結んでおり、1987年(昭和62年)に廃止されました。沿線には、日本百名山で関東平野が一望できる筑波山の玄関口「筑波」や、 古い町並みが残る歴史の町「真壁」、紫陽花で知られる「雨引観音」など 、地域の主要な町や観光地がありました。

紫峰と呼ばれる筑波山

蔵や土蔵が残る真壁

筑波鉄道の廃止後、鉄道跡はサイクリングロード「つくば霞ヶ浦りんりんロード」として整備されました。鉄路はアスファルトに、駅舎があった場所には休憩所が設置されました。また、サイクリングロードには鉄道の遺構もあり、当時の面影が残されています。

つくば霞ヶ浦りんりんロード(道路が鉄路跡、建物が駅跡)

当時の筑波鉄道は、平城であった小田城の本丸跡を斜めに貫いており、筆(土地)にその形跡を見ることができます。 現在の小田城跡の遺構復元広場では城郭があった時代を偲ぶことができますが、筆(土地)には城郭の形に上書きした鉄道跡も残っており、異なった時代の土地利用の履歴をうかがい知ることができます。

小田城跡の遺構復元広場

出典:
国土地理院ウェブサイト「地理院地図(電子国土Web)データ」(国土地理院)をもとに加工して作成
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成

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