コラム

地図の雑学|旧野蒜駅(宮城県)~鉄路跡の筆から復興の姿が見えてくる~

MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.24 旧野蒜駅(宮城県)~鉄路跡の筆から復興の姿が見えてくる~

宮城県東松島市には日本三大渓の一つである嵯峨渓があります。嵯峨渓は波と雨風によって浸食された海食崖が見どころになっています。激しく削られた岩々は自然の驚異と神秘を伝えています。

この場所をMAPPLEの法務局地図ビューアで見てみる

地図で嵯峨渓を見ながら北へ目を向けると、JR仙石線が走っているのが分かります。JR仙石線は仙台市と石巻市を結ぶ路線です。JR仙石線のルートをよく見ると、仙台方面から石巻へ向かう途中、東名駅手前で海側へ向かい野蒜駅の先で、再びJR仙石線に合流する細長い筆(土地)があります。

この細長い筆(土地)は JR仙石線が通っていた跡です。以前は、JR仙石線は現在より海側(赤いルート)を走っていました。しかし、2011年の起きた東日本大震災によって JR仙石線は被災、途中にあった旧東名駅と旧野蒜駅も津波により甚大な被害を受けました。その後、JR仙石線は内陸部を通るルートが検討され移設されることになりました。被災した東名駅と野蒜駅も高台へ移設されることになり、2015年にJR仙石線は復旧しました。現在、旧野蒜駅があった場所には震災の記憶と教訓を後世に伝える震災復興伝承館が開設されています。

震災復興伝承館では被災前後の写真や記録映像が視聴できるだけでなく、復旧や復興の展示など震災の記憶と防災や減災を学ぶ場になっています。また、震災復興伝承館には旧野蒜駅のプラットフォームが震災遺構として一般公開されており、津波によって歪んでしまった線路や折れ曲がった柱など間近で見学することができます。JR仙石線が走っていた跡の筆(土地)は東日本大震災の被害の大きさと、その後の復興に向けての活動の記録を後世に伝えています。

出典:
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成

「地図の雑学」
「地図の雑学」は地図技術者・地図編集者が「地図の制作にまつわる話」や「地図を使った楽しみ方」を紹介するコーナーです。
> これまでの記事一覧はこちら

COLUMN一覧へ