MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。
◆No.21 紫式部公園・紫式部墓所(福井県・京都府)~紫式部と所縁の地にある筆~
源氏物語は平安時代に紫式部によって創作された長編物語です。貴族社会を舞台にした物語では宮廷の様子や貴族の生活などが描かれています。また、紫式部の人生観も表されているといわれており、源氏物語は今もなお、多くの人々を魅了しています。
廬山寺
廬山寺の庭園
京都市を中心に、紫式部に所縁のある地は滋賀県や福井県に点在しています。京都御所の近くには、紫式部が過ごし、源氏物語を執筆していた邸宅跡である廬山寺。滋賀県大津市には紫式部が源氏物語を起筆したとされる石山寺や、紫式部の父・藤原為時が出家した三井寺(園城寺)など、一家にとって所縁の深い寺などがあります。
石山寺
三井寺(園城寺)
【紫式部公園】
福井県越前市は、紫式部が京を離れて一年余りを過ごした場所です。越前国司として、この地に赴任した父の為時とともに訪れました。越前市には紫式部に所縁のある地として、紫式部公園が整備されています。公園内には平安朝式庭園が造られ、金色の紫式部像や寝殿造りの釣殿、池泉があり、平安貴族が見たであろう風景を見ることができます。また、「紫ゆかりの館」が隣接しており、紫式部に関する資料を見ることができます。
紫式部公園を地図でみると筆(土地)が一筆で設定されています。1974 年~1978 年の空中写真では田畑になっているようですが、2021 年の空中写真では周辺の道路や公園が整備されています。紫式部公園は 1981 年(昭和 56 年)の都市計画決定によって整備された歴史を感じることができる都市公園で、区画整理事業で一筆になったと考えられます。
1974 年~1978 年
2021 年
【紫式部墓所】
紫式部と所縁の深い京都市には紫式部の墓所があります。紫式部の墓所は京都御所より北西に位置した場所にあります。墓所については室町時代の書物にも記載されていることから、かなり古い時代から知られていたようです。
紫式部の墓は、平安時代の官僚で文武に秀でたとされる小野篁の墓と並んでいます。墓所のある地域は紫野(むらさきの)と呼ばれており、高貴な色であった紫色の草花が咲く野原があったことに由来しているとも云われています。また、天皇の離宮などもあり、天皇の所縁の地でもありました。紫野は名所として源氏物語にも登場しています。
さらに紫野は紫式部が余生を送った場所であったという逸話もあり、紫式部と大変ゆかりの深い土地だったようです。地図で筆(土地)を見ると、墓所の筆(土地)(図中の赤丸)は工場区画の一画にありながら、工場とは別の筆(土地)として一筆で設定されており、人々によって墓所が大切に守られていることが伝わってきます。
出典:
国土地理院ウェブサイト「地理院地図(電子国土 Web)データ」(国土地理院)をもとに加工して作成
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成
「地図の雑学」
「地図の雑学」は地図技術者・地図編集者が「地図の制作にまつわる話」や「地図を使った楽しみ方」を紹介するコーナーです。
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