コラム

地図の雑学|三春滝桜(福島県)~梅・桃・桜で春が来る「三春」に咲く桜の筆~

MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.16 三春滝桜(福島県)~梅・桃・桜で春が来る「三春」に咲く桜の筆~

三春町は「梅・桃・桜の三つの花が同時に咲いて、一度に三つの春が来る」に由来した町で、戦国時代に築かれた三春城を中心に発展した城下町です。三春といえば、全国に知られた桜の古木がありますが、その桜は、満開の枝が滝のように見えることから「三春滝桜」と呼ばれ、春になると多くの花見客で賑わいます。

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大正時代に 5 つの桜が天然記念物に指定されました。これらの桜は日本五大桜と呼ばれ、三春滝桜はその中のひとつです。残りの 4 つの桜は埼玉県の石戸蒲ザクラ、山梨県の山高神代桜、静岡県の狩宿の下馬桜、岐阜県の根尾谷淡墨桜となっています。

「石戸蒲ザクラ」は、埼玉県北本市の東光寺境内にある樹齢約 800 年とされる桜です。蒲ザクラとは蒲冠者(かばのかんじゃ)と呼ばれた源範頼に由来しており、伊豆修善寺に流された範頼が、東光寺まで逃れてきたという言い伝えが残っており、範頼がこの地で、杖を地面に刺したところ、根付いた桜が蒲ザクラだと云われています。

「狩宿の下馬桜」は静岡県富士宮市にある樹齢 800 年以上とも言われる古木で、1193 年に源頼朝が富士の巻狩りを行った際に、頼朝が馬から降りた所だと言われています。また、下馬桜に馬を繋いだという言い伝えより、駒止めの桜とも呼ばれています。

日本五大桜のひとつ 石戸蒲ザクラ(埼玉県)

5 つの桜のうち「三春滝桜」「山高神代桜」「根尾谷薄墨桜」の3つは、日本三大桜と呼ばれています。

「三春滝桜」は福島県三春町にあり、推定樹齢 1000 年を超える桜です。薄紅色の花びらと枝垂れが特徴で「紅枝垂」と呼ばれています。四方に伸びた枝垂れに咲く花が、まるで流れ落ちている滝のように見えることから「滝桜」と呼ばれるようになったと云われています。

三春滝桜(福島県)

「山高神代桜」は山梨県北杜市武川町の実相寺境内にある、推定樹齢 1800 年から 2000 年とも言われるエドヒガンザクラの日本最古級の古木です。東征を行ったヤマトタケルノミコトが植えたという伝説があり、名前の由来になっています。また、実相寺境内には宇宙へ旅立ち帰還した山高神代桜の種が発芽した「宇宙桜」があります。

山高神代桜(山梨県)

「根尾谷淡墨桜」は岐阜県本巣市にある樹齢 1500 余年と言われる桜で、継体天皇がお手植えしたと伝わる古木です。薄ピンクの蕾と白い花びらが特徴ですが、満開を過ぎると淡い墨色に変化することから「淡墨桜」と名付けられたと云われています。

根尾谷淡墨桜(岐阜県)

改めて三春滝桜の筆(土地)を見ると、ちょうど桜の主幹を中心に筆(土地)があり、三春滝桜が筆(土地)を持った珍しい樹木であることがわかります。また、現在は保護と観覧のために三春滝桜の周辺は整備されていますが、数十年前の空中写真では、三春滝桜の周辺は農作地になっており、当時の土地利用が現在の筆(土地)に残っていることがわかります。

(2020 年)

(1974 年~1978 年)

三春滝桜の筆(土地)に隣接して昔の道の跡も残っています。古い時代に撮影された滝桜の写真には、桜の主幹の傍で集合した人々の姿が写っているものもあることから、以前は桜の主幹のすぐ近くまで行くことができたようで、当時の三春滝桜の様子を思い起こすことができます。

梅・桃・桜で春が来る三春に咲く「三春滝桜」の筆(土地)は、桜の主幹に筆(土地)が設定された全国でも珍しい樹木の筆(土地)であると同時に、桜と人のふれあいを偲ぶことができる筆(土地)でした。

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出典:
国土地理院ウェブサイト「地理院地図(電子国土 Web)データ」(国土地理院をもとに加工して作成)
国土地理院撮影の空中写真(2020 年撮影)
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成

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「地図の雑学」は地図技術者・地図編集者が「地図の制作にまつわる話」や「地図を使った楽しみ方」を紹介するコーナーです。
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