MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。
◆No.54 万石浦(宮城県)~海にある筆の正体は?~
宮城県石巻市と女川町にまたがる万石浦(まんごくうら)は、仙台藩2代藩主の伊達忠宗が「ここを干拓すれば一万石の米が収穫できるだろう」と語ったことから万石浦と呼ばれるようになったと伝わっています。また、古くから和歌にも詠まれてきた場所でもあり、歌枕「奥の海」は万石浦であったとされています。
万石浦は江戸時代より塩田として製塩が盛んでしたが、現在はアサリ漁が盛んで牡蠣や海苔の養殖地としても利用されています。万石浦を地図で見ると海に筆(土地)だけが表示されています。空中写真と比べて見ると、そこには陸地はなく海となっています。しかし、よく見ると、形状はやや異なるものの陸地であったような痕跡がうっすらと見えています。そこで、古い地図を見ると、大正時代では陸地として表記されており、1960年代の空中写真では干拓された土地が写っています。
赤い丸の部分に陸地が見える
これらから筆(土地)の場所には陸地が存在していたようです。陸地が消失してしまった理由は定かではありませんが、2011年(平成23年)に起きた東日本大震災によって、万石浦の周辺では地盤が約90㎝沈下し、多くの干潟が消失、アサリ漁に大きな被害をもたらしたと言われています。筆(土地)がある場所も震災前の空中写真では干潟のようなものが見られるため、震災の影響を受けて完全に消失してしまったのかもしれません。
現在、筆(土地)の場所は水部になっている
大きな被害を受けた万石浦ですが、干潟の再生が行われることになり、生き残ったアサリから育てた稚貝を放流し、アサリ漁が再び行われるまでに回復しています。現在の万石浦を見ると、そこに陸地があったとは想像できませんが、筆(土地)には陸地があったという痕跡が残されています。
出典:
国土地理院ウェブサイト「地理院地図(電子国土Web)データ」(国土地理院)をもとに加工して作成
国土地理院撮影の空中写真(2020年撮影)
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成
大正2年測図同5年製版 5万分の1「石巻」 大日本帝国陸地測量部
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