MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。
◆No.12 間口港・レジーアマリーナ(岡山県)~水面に筆?水面が所有できる理由~
岡山県瀬戸内市間口港にあるレジーアマリーナという施設は、水面に設定されている筆(土地)が所有できる全国でも珍しい場所です。地図を見ると筆が海上に整然と並んでおり、桟橋や係留場所ごとに筆(土地)が設定されているようです。この不思議な筆(土地)があるレジーアマリーナは、海の駅という施設に認定されています。海の駅とは、海からの来訪者のための一時係留施設が設置されたビジターバースや、マリンレジャーに関する情報提供のための施設などが設置されたマリンレジャーの拠点として認定されている施設です。
ところで、公共用の水面には土地所有権は設定できないことになっており、実際に田原湾干潟訴訟と呼ばれる裁判によって判決が下されています。現在、海など公の水面を所有するためには埋め立てをして土地を造成する必要があります。埋め立てを行うためには知事や市町村長、港湾管理者から埋め立ての免許を受け、工事完了後に竣功認可の告示がされる必要があることが、1921 年(大正 10 年)に制定された公有水面埋立法によって定められています。
しかし、間口港内にあるレジーアマリーナの水面の筆(土地)については所有ができるとされています。公有水面埋立法が制定される前に作成された明治時代の地図を確認すると、レジーアマリーナがある場所は堤防に囲まれていることが分かります。江戸時代、瀬戸内海で多くの塩田が造られましたが、塩田を造るために多くの堤防が築かれ、海が干拓されています。近くには東洋一の規模を誇った錦海塩田も位置するなど、最近まで塩田での塩の生産が盛んでした。
現在、水面に筆がある場所も明治時代の地図では水域表示ですが、堤防に囲まれていることから実際は干拓地としての扱いであったのだろうと推測されます。そのため、公有水面埋立法が制定される以前に造成された土地として法律は適用されず、水面でありながら土地として登記されるに至ったと考えられる、全国でも珍しい水面に設定された筆(土地)になっています。
出典:
国土地理院撮影の空中写真(2020年撮影)
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成
明治28年及30年測図同33年製版同43第1回修正測図同43年5月図名片上を改称大正2年改版 5万分の1「和気」 大日本帝国陸地測量部
参考資料:
レジーアリゾートホームページ
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