地図の雑学|三好池(愛知県)~筆が語る水が紡いだ地域の歴史~

2026年01月09日配信

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MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューアは、全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認できるWebサイトです。今回、MAPPLE法務局地図ビューアを使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.90 三好池(愛知県)
~筆が語る水が紡いだ地域の歴史~ 

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この場所をMAPPLE法務局地図ビューアで見てみる

筆(土地)には、その場所がたどってきた歴史が刻まれていることがあります。愛知県みよし市にある三好池もまた、現在の姿からは見えにくい過去の姿を、その筆(土地)に留めています。三好池を地図でよく見ると、現在の池の範囲よりも一回り小さな不整形な筆(土地)の区画(下図の赤色部)を見つけることができます。この筆(土地)は、この地の歴史と深く結びついており、ある重要な事業の痕跡を示しています。

三好池_地図

愛知県みよし市は、名古屋市のベッドタウンとして宅地開発が進む一方で、豊田市に隣接しているため自動車関連産業などの企業も多く立地しています。また、みよし市はカヌー競技が盛んな「カヌーの町」として知られ、市内にある三好池や保田ケ池ではカヌー競技大会が開催されています。

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現在、カヌー競技の舞台となっている三好池ですが、実は愛知用水の調整池として整備されました。愛知用水は、愛知県の尾張東部の農業・水道・工業用水を確保するため、岐阜県八百津町の木曽川・兼山ダムから取水し、知多半島まで水を供給する大規模な用水路です。幹線水路のほかにも支線水路があり、それらと合わせて三好池や愛知池などの調整池が整備されました。
愛知用水が整備される以前、この地域では慢性的な水不足に悩まされており、古くから多くの「ため池」が造られてきました。古い地図を見ると、赤丸で示した三好池の周りにも「ため池」が点在していたことがわかります。現在の三好池は、それらのため池の一つを中心に造成され、誕生したのです。

三好池周辺_古地図_赤丸点在する「ため池」

三好池に見られる一回り小さな筆(土地)は、その形状から、愛知用水の造成の中心となった元のため池の区画であると考えられます。この筆(土地)は、愛知用水が整備される前の地域の水事情、そして大規模な水利事業によって調整池が誕生するまでの歴史を物語っています。まさに、この土地が地域の歴史を現代に伝える生きた証と言えるでしょう。

三好池_地図

三好池_古地図

 現在と明治時代の三好池 


現在の三好池は総合公園として整備され、カヌー競技だけでなく三好池まつりの会場にもなっています。この祭りは、三好池の完成と愛知用水の通水によって木曽の水が田畑を潤し、その水の恵みに感謝して郷土の産業発展を願ったのが始まりです。約400個の提灯が灯された提灯船が池に浮かび、盛大な花火が打ち上げられる、地域にとって大切なイベントになっています。このように、三好池に残る筆(土地)は、過去の水不足を克服し、地域の発展に貢献してきた三好池と愛知用水の歴史を物語っています。

出典: 
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成 
 明治24年測図同31年製版 5万分の1「挙母村」大日本帝国陸地測量部 

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