地図の雑学|美保関(島根県)~神話と歴史が息づく、風光明媚な町の筆~

2025年11月14日配信

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MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.86  美保関(島根県)   
 ~神話と歴史が息づく、風光明媚な町の筆~      

豊かな自然と古い歴史を持つ美保神社が鎮座する美保関。島根半島の先端に位置するこの地は、かつて美保関町と呼ばれ、現在は松江市の一部です。半島の先には、1898年(明治31年)に点灯された山陰最古の美保関灯台が今もなお海を照らし、航行の安全を見守っています。灯台からは、遥か隠岐の島を望み、美保湾の向こうには雄大な大山の姿を捉えることができます。 

美保関灯台美保関灯台 

美保関灯台の手前にある美保関集落は、美保神社の門前町として栄えてきました。「古事記」や「日本書記」にも登場する「国譲り神話」で知られる事代主命(ことしろぬしのかみ)を祀っており、えびす様の総本宮として多くの人々の信仰を集めています。また、入り組んだ地形は天然の良港となり、北前船をはじめとする人々の往来と文化の交流を育んできました。 

32000501_00000美保関神社 

江戸時代から明治時代にかけて、美保関は西廻りの航路の寄港地でした。北前船は、荷物の運搬だけでなく、寄港地において品物の売買を行いながら航海したため、「海を走る総合商社」とも言えました。航海を終えた北前船は千両(約1億円)もの利益を得たとされ、当時の人にとっては自前で船を持ち一攫千金を狙うことは大きな夢でした。門前町であった美保関には、各地の物産や文化がもたらされ、廻船問屋が軒を連ねる港町としても発展しました。現在、港に残る常夜燈は、当時の賑わいを静かに物語っています。 

常夜燈美保関の常夜燈 

このように、美保関は信仰の中心である門前町と、交易の拠点である港町という二つの顔を持つ町として発展してきました。その様子は筆(土地)にもよく表れています。地図を見ると、筆(土地)の配置や形から特徴的な町割りを一目で見て取ることができます。港を囲むように細長い筆(土地)が整然と並ぶ様子は、港町の特徴を良く表しており、活気のあったころの様子を今に伝えています。 

タイトル&地図美保関の筆

一方、美保神社から仏谷寺へと続く参拝道には、間口が狭く奥行きのある筆(土地)が並んでおり、門前町の面影を色濃く残しています。特に、海から切り出された青い石が敷き詰められた「青石畳通り」は、筆(土地)だけでなく、街並みにも当時の雰囲気が残っており、訪れる人々を魅了しています。美保関にある筆(土地)は、門前町と港町という二つの異なる側面からこの地が栄えてきた歴史を映し出しています。 

青石畳通り青石畳通り

出典:「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成

 

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