地図の雑学|川中島古戦場史跡公園(長野県)~両雄が激突した古戦場の筆~

2025年10月31日配信

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MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.85  川中島古戦場史跡公園(長野県)  
 ~両雄が激突した古戦場の筆~     

川中島の戦いは、1553年(天文22年)から1564年(永禄7年)にかけて、上杉謙信と武田信玄が北信濃の支配権をめぐり争った戦いです。軍旗に「毘」を掲げ、その強さから軍神と呼ばれた上杉謙信と、同じく軍旗に「風林火山」を掲げ、戦国最強と恐れられた騎馬隊を率いた武田信玄は、5度にわたり戦いました。戦いのきっかけは、武田信玄が北信濃の村上氏を攻略し、敗れた村上氏が上杉謙信を頼ったことでした。 上杉謙信は、村上氏に応える形で武田信玄と対峙しました。 

上杉謙信像_15000211_00012春日山城跡の上杉謙信像

川中島の戦いは5度にわたり行われました。川中島は犀川と千曲川に挟まれた地域であり、古くから戦略的要衝でした。第一次川中島の戦いでは、上杉・村上連合軍が武田軍に勝利したものの、武田軍の巻き返しに遭い、一進一退の攻防を繰り広げた末、両軍は撤退しました。第二次川中島の戦いでは、武田信玄は今川氏、北条氏と三国同盟を結び、後背の憂いを断って、打倒上杉謙信に全力を注ぎました。両軍は犀川を挟んで対陣し膠着状態となりますが、長期戦の末、今川義元が仲介し和睦しました。 

武田信玄像-1甲府駅前の武田信玄像

第三次川中島の戦いでは、武田信玄が再び北信濃へ進出を図りました。上杉謙信はそれを阻止するために出陣しましたが、この戦いでは大きな衝突には至らず、上杉謙信は撤退し、武田信玄の勢力範囲が広がりました。そして、戦国史上でも最大の激戦の一つに数えられる第四次川中島の戦いでは、武田信玄が啄木鳥戦法を駆使して妻女山に布陣した上杉軍に攻撃を仕掛けたのに対し、上杉謙信はそれを察知し、妻女山から八幡原へ移動して車懸かりの戦法で武田軍の本陣に奇襲攻撃を行いました。濃霧で視界が悪い中、両軍は激突し、上杉謙信が武田信玄のいる本陣に斬り込み一騎打ちを演じたという話が残されています。総力戦となったこの戦いで両軍ともに甚大な被害を負いましたが、北信濃の武将の多くが武田方についたため、善光寺平は武田信玄が実質支配することになりました。 

一騎打ちの像_20012642_00001謙信の太刀を軍配で受け止める信玄

最後の戦いとなった第五次川中島の戦いでは、越後をうかがう武田信玄に対し、上杉謙信が呼応する形で川中島へ出陣しました。両軍は陣を構え対峙したまま睨み合いが続きましたが、衝突することなく兵を退きました。これ以降、両者が川中島で戦うことはなく、12年に渡って繰り広げられた川中島の戦いは終結しました。この戦いによって、武田信玄は北信濃の大半を手中に収めることに成功しました。 

川中島古戦場史跡公園川中島古戦場史跡公園

八幡社_20012642_00000史跡公園内にある八幡社 

川中島の戦いでは、様々な物語が生まれましたが、特に有名なのが上杉謙信と武田信玄の一騎打ちです。その場所は、川中島古戦場史跡公園に隣接する八幡社であると伝わっています。八幡社は、武田信玄が陣を敷いた場所で、周辺は史跡公園として整備されています。公園は桜の名所として知られ、隣接する長野市立博物館では、川中島の戦いに関す る展示が行われるなど、川中島の戦いを詳しく知ることができます。 

八幡社_筆

八幡社_空中写真

 八幡社の筆(土地)

筆(土地)を見ると、川中島古戦場の周辺には、公園が整備される前の姿が残されています。その中には、今でも変わることのない筆(土地)があります。それは八幡社です。境内には上杉謙信と武田信玄が一騎打ちを行った場面を再現した像が設置されています。八幡社の筆(土地)は道路のポリゴンに挟まれていますが、古い空中写真にも同様に道路に挟まれた八幡社の姿が写っています。筆(土地)や空中写真から、八幡社は大きな変化をすることなくこの地に鎮座していたことが想像できます。地図や空中写真では公園の一部に見える八幡社ですが、筆(土地)には川中島の戦いの舞台となった面影が今も残されています。 

1961年~1969年1961年~1969年の八幡社

1974年~1978年1974年~1978年の八幡社

出典:
 国土地理院ウェブサイト「地理院地図(電子国土Web)データ」(国土地理院)をもとに加工して作成
 国土地理院撮影の空中写真(2010年撮影)  
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成

 

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「地図の雑学」は地図技術者・地図編集者が「地図の制作にまつわる話」や「地図を使った楽しみ方」を紹介するコーナーです。
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