地図の雑学|桜ヶ丘ロータリー(東京都)・蕃所山古墳(大阪府)~円形の筆に秘められた、二つの物語~

2025年10月17日配信

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地図の雑学(タイトル2行2バージョン)

MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.84  桜ヶ丘ロータリー(東京都)・蕃所山古墳(大阪府) 
 ~円形の筆に秘められた、二つの物語~      

同じ円形の筆(土地)でも、全く異なる意味を持つ筆(土地)があります。
東京都多摩市には東京都で初めて環状交差点として認定された交差点があります。環状交差点はラウンドアバウトとも呼ばれるもので、道路がドーナツ状になっており、円を描きながら行きたい方向の道路に向かって走るのが特徴です。日本でも最近見られるようになった交差点の形式で、車両は右回り(時計回り)に通行し、交差点内を通行する車両が優先されます。ラウンドアバウトから出るときには左側の方向指示器で合図を出しながら出ていきます。

ランナバウトラウンドアバウト(環状交差点)

多摩市にあるラウンドアバウトは京王線の聖蹟桜ヶ丘駅から丘を登ったところにあるニュータウン・桜ヶ丘と呼ばれる住宅街の一角にあります。ラウンドアバウトに繋がる道には右回り(時計回り)に矢印が描かれている環状交差点の道路標識があります。このラウンドアバウトは桜ヶ丘ロータリーと呼ばれていますが、スタジオジブリの映画「耳をすませば」の舞台としても描かれ、現在も熱心なファンが聖地巡りとして訪れています。

DSC_6498桜ヶ丘ロータリー

地図でラウンドアバウトの場所を見ると円形の筆(土地)があることが分かります。この円形の筆(土地)はラウンドアバウトの中心部分にあたり、周りの道路と歩道の筆(土地)の形状から綺麗なラウンドアバウトの形が浮かび上がっています。

桜ヶ丘ロータリー桜ヶ丘ロータリー の筆

DSC_6520ロータリー(円形交差点) 

これほど綺麗な円形の筆(土地)を持つ桜ヶ丘ロータリーですが、ラウンドアバウトに認定される以前からロータリーとして使用されていたため、ニュータウンとして造成される際に円形の筆(土地)として計画・登録されたものと考えられます。全国で増えつつあるラウンドアバウトですが、桜ヶ丘ロータリーのような綺麗な筆(土地)を持つラウンドアバウトは希少です。

蕃所山古墳_筆蕃所山古墳の筆

 一方、周りを道路で囲まれている筆(土地)は大阪府藤井寺市にもあります。こちらはラウンドアバウトではなく、ロータリーですが、円形の筆(土地)を持っています。この筆(土地)は少し変わっていて、筆(土地)には蕃所山古墳と呼ばれる古墳があります。蕃所山古墳は円墳と呼ばれる種類の古墳で、墳丘は住宅街の風景に溶け込んであり、一見すると、こんもりした小さな丘にしか見えません。地元では「モッコ塚」という愛称で親しまれています。なぜ、このような形になったのか。それは、古墳の周りが宅地化されるにあたって、墳丘が保存されることになり、円墳であった古墳に沿う形で道路が造られため、円形の筆(土地)が誕生したと考えられます。 

このように、東京と大阪で見られるロータリーの筆(土地)は同じ円形の筆(土地)であっても、その成り立ちを調べて見ると、全く異なる経緯で誕生したことが分かります。筆(土地)は、地域の歴史的背景を知る上で重要な要素となり得るのです。 

出典:「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成

 

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