地図の雑学|日高地方・帯広競馬場(北海道)~地図が語る、馬と人々の物語~

2025年09月05日配信

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MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.81  日高地方・帯広競馬場(北海道)
~地図が語る、馬と人々の物語~    

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この場所をMAPPLE法務局地図ビューアで見てみる

北海道における馬の歴史は古く、明治時代に始まった開拓では、土地の開墾や農耕に欠かせない労働力として活躍しました。北海道の開拓の歴史は人とともに歩んだ馬の歴史であるとも言えるでしょう。

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空中写真_門別

北海道の日高地方は競走馬の生産・育成が盛んであり、多くの牧場が点在しています。地図を見ると、小判形や競技場のトラックのような楕円の筆(土地)を見つけることができます。これらの筆(土地)は競走馬の生産・育成牧場の筆(土地)であり、空中写真を見ると、楕円の筆(土地)は1500mから1000m程度で、隣接する建物はトレーニング施設のように見えます。 

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空中写真_門別_2

 未来のスターホースたちが日々トレーニングに励む一方で、栄光の引退馬たちがのんびりと過ごす牧場が、この地域にはあります。また、ふれあい牧場もあり、現役時代にターフを沸かせた名馬たちに会えるだけでなく、動物と触れ合うこともできるので、競馬を知らない方でも心ゆくまで楽しむことができます。 

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馬と自然にふれあえる「うらかわ優駿ビレッジAERU」

このような楕円の筆(土地)は、帯広市にある帯広競馬場でも見ることができます。帯広競馬場は、世界で唯一「ばんえい競馬」が開催される競馬場です。ばんえい競馬とは、騎手が鉄製のソリに乗り、輓馬(ばんば)と呼ばれる競走馬がそのソリを引いてゴールを目指すレースです。馬が引くソリは約1,000㎏もの重さになり、直線200mのダートコースには2つの障害(坂)が設けられています。馬たちが重いソリを引いて坂を上る姿は、まさに圧巻です。 

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ばんえい競馬

ばんえい競馬の起源は、北海道開拓時代に遡ります。当時、農耕や木材運搬などで活躍した馬たちは「輓き馬」や「輓馬」と呼ばれていました。二頭の馬を繋ぎ、綱引きのように引っ張り合わせる力比べが、ばんえい競馬の原型になったと言われています。その後、明治時代の終わり頃には「お祭りばん馬」として、家族みんなで楽しめる娯楽として親しまれるようになりました。 

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空中写真_帯広競馬場 2023年の帯広競馬場 

帯広競馬場の楕円の筆(土地)をよく見ると、楕円の筆の中を道路が通り、輓馬のコースも位置が異なっています。これは楕円の筆(土地)が古い時代の帯広競馬場を表しているからです。1961年から1969年の空中写真を見ると楕円の筆(土地)と一致していることがわかります。帯広競馬場は1897年(明治30年)に開場し、1974年(昭和49年)、老朽化に伴い馬場の大改修が行われ、観覧席や構内も改修されました。しかし、筆(土地)は再設定されることなく改修前の状態で今に至っています。

北海道の日高地方や帯広で見られる楕円の筆(土地)は、北海道の開拓時代から続く馬の文化と、馬と密接な関係を築いてきた人々の歴史を今に伝えているのです。 

 

出典:
  国土地理院ウェブサイト「地理院地図(電子国土Web)データ」(国土地理院)をもとに加工して作成 
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成
 

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「地図の雑学」は地図技術者・地図編集者が「地図の制作にまつわる話」や「地図を使った楽しみ方」を紹介するコーナーです。
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