地図の雑学|尻屋埼灯台(青森県)~寒立馬が棲む岬に建つ、日本一高いレンガの灯台の筆~

2025年08月08日配信

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地図の雑学(タイトル)-4

MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.79 尻屋埼灯台(青森県) 
 ~寒立馬が棲む岬に建つ、日本一高いレンガの灯台の筆~   

02_青森県

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青森県下北半島の突端、尻屋崎(しりやざき)には、その地形に合わせて設定された筆(土地)の中に、灯台のためだけに設けられた特別な「筆」が存在します。尻屋崎は、「寒立馬(かんだちめ)」と呼ばれる馬が一年を通して自然放牧されていることでも有名です。厳しい風雪が吹きつける雪原で寒さに耐え忍び逞しく生きる姿から、その名が付けられたとされています。 

2000753_00002寒立馬

寒立馬の祖先である南部馬は、平安時代には既に下北半島で放牧されていたとされ、その歴史は非常に古いものです。江戸時代から昭和時代にかけては、軍事目的のために外来種と交配され、田名部馬(たなぶうま)として周年放牧されてきました。特に尻屋地域では、この田名部馬とフランスの輓用馬であるブルトン種を交配し、農用馬として育成が進められました。こうして尻屋地域で育成されてきたのが現在の寒立馬です。寒立馬は粗食や寒さに強く、風雪が厳しく冬の過酷な尻屋崎の気候にも適応できる特性を持っています。しかし、時代と共にその数は激減し、一時は絶滅も危惧されましたが、保護活動により少しずつ回復の兆しを見せています。 

2000753_00000_1寒立馬と尻屋埼灯台

寒立馬がのびのびと暮らす尻屋崎の突端には、「尻屋埼灯台」が設置されています。1876年(明治9年)に点灯したこの灯台は、高さ30mを超えるレンガ造りで、日本一高いレンガの灯台として知られています。尻屋崎周辺の海域は、強い風と濃霧が発生しやすいことから、海の難所とされてきました。そのため、尻屋埼灯台では濃霧対策として当初から霧鐘が取り付けられ、その後、日本で初めて霧笛が設置された灯台としても歴史に名を刻んでいます。 

 

2000753_00005

また、尻屋埼灯台の光は日本最大級の規模を誇り、光を放つ方向を自由に調整できるレンズや、電気を使用したアーク灯を日本で初めて設置した灯台でもありました。さらに、尻屋埼灯台には非常に珍しい記録が残されています。それは、灯台に隕石が落下したという記録です。これにより、尻屋埼灯台は日本で唯一隕石が落下した灯台となっています。

さて、前述したように尻屋埼灯台の「筆」は、周囲の筆とは一線を画すように設定されています。この形状を地図や空中写真で確認すると、灯台の敷地に合わせて正確に設定されていることが分かります。まさに、この筆は灯台のために特別に設けられた「筆」と呼ぶにふさわしいでしょう。下北半島の先端に位置する尻屋崎では、航行の安全を見守り続けてきた数々の記録を持つレンガ造りの灯台と、その灯台のためだけに設定された特別な筆(土地)を見ることができます。

尻屋崎灯台_地図

尻屋崎灯台_写真_1

出典:
 国土地理院撮影の空中写真(2004年撮影)
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成
 

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