地図の雑学|羽黒山(山形県)~2446段の石段が続く杉並木の筆~

2025年07月25日配信

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地図の雑学(タイトル)-3

MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.78 羽黒山(山形県)
2446段の石段が続く杉並木の筆~  

06_山形県

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 山形県鶴岡市の羽黒山は古くから山岳修験の地として知られています。山岳修験は羽黒山(414m)、月山(1,984m)、湯殿山(1,500m)の出羽三山で行われ、「羽黒修験道」として1400年の歴史があります。羽黒修験道では、それぞれの山が、現在(羽黒山)、過去(月山)、未来(湯殿山)に見立てられ、江戸時代には「生まれかわりの旅」として、信仰が庶民の間に広まりました。 

6001106_00001月山

6010269_00001湯殿山

羽黒山の山頂には出羽三山神社(三神合祭殿)があり、羽黒山の麓にある手向集落から登ります。手向集落は羽黒山の門前町であり、宿坊が軒を連ねています。集落の端にある随神門をくぐると、羽黒山の参道が始まります。参道は一度下って行き、橋を渡ると羽黒山へ続く石段の登りが始まります。地図を見ると、出羽三山神社へ続くこの参道は、一筆で設定されている面白い筆(土地)で、実に約1.7㎞も続くとても長い筆(土地)になっています。 

羽黒山石段の筆
一筆で設定されている参道 

 

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出羽三山神社(三神合祭殿)まで続く参道は、2,446段の登りの石段です。約1時間30分をかけて登る道中は、杉並木となっています。杉の樹齢は300年から500年を超すものが多く、荘厳な雰囲気が漂っています。また、途中には羽黒山五重塔や、奥の細道で知られる俳人・松尾芭蕉が立ち寄り宿泊したとされる別院紫苑寺跡など、重要文化財や史跡・名勝などが点在しています。そして、参道の終着地にある出羽三山神社(三神合祭殿)には、羽黒山、月山、湯殿山の三神が祀られています。

このように、長い参道には様々な見どころや歴史がありますが、参道が一筆(土地)に設定されているのは、参道が神聖な道だからなのかもしれません。実は、羽黒山にはもう一つ面白い筆(土地)があります。その筆(土地)は、羽黒山五重塔に設定された筆(土地)です。羽黒山五重塔は、平将門が創建したと伝わる東北地方最古の塔といわれています。現在の塔は、約600年前に再建されたものといわれ、高さは29.0m、三間五層杮葺素木造からなる五重塔は国宝に指定されています。 

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羽黒山五重塔_空中写真

羽黒山五重塔と筆

羽黒山五重塔に設定された筆(土地)は、五重塔とそこへ至る道が一筆で設定されています。山岳地域に建立された神社や寺院の多くは、山の土地の筆(土地)と一緒であることが多く、羽黒山五重塔のように建物に対して筆(土地)が設定されているのは大変珍しいと言えます。筆(土地)からは羽黒山五重塔が、参道とともに神聖な場所であることが伺い知れます。 

出典:
 国土地理院撮影の空中写真(2022年撮影)
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成
 

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