コラム

地図の雑学|三分一湧水(山梨県)~湧水を三等分に!筆から読み解く先人の知恵~

MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.48 三分一湧水(山梨県)~湧水を三等分に!筆から読み解く先人の知恵~

八ヶ岳の麓に広がる山梨県北杜市旧長坂町には、名水百選に選ばれた八ヶ岳南麓高原湧水群があります。その中の一つ、JR小海線の甲斐小泉駅の近くに「三分一湧水」があります。地図を見ると、三方に伸びていくポリゴンが見られますが、このポリゴンは水の分配を巡って先人の知恵によって誕生した分配装置です。

この場所をMAPPLE法務局地図ビューアで見てみる

三分一湧水は上流から流れてきた水を分水枡に貯め、分水杭を通して三方に均等に水を流す水の分配装置で、地図でポリゴンを見ると、分水枡のポリゴンと三つの方向に流れていく水路のポリゴンの姿を見ることができます。

その昔、三分一湧水のある地域では水の争いが絶えず、武田信玄が水の集まる分水枡に三角石柱を築き、三つの村に水を均等に配分したという伝説があります。長年続いた湧水の利用をめぐる争いを解決するために、湧水をそれぞれの村に向けて三分の一ずつ均等に分配するために考え出されたのが、分水枡に三角石柱を築き、水を三方へ均等に分配する方法でした。このことが「三分一湧水」という名の由来になっています。

分水枡と三角石柱

その後、湧水地は八ヶ岳南麓の山崩れにより押し流されるなどの災害に見舞われましたが、1944年(昭和19年)に今の形に修復され現在に至っています。三分一湧水は今でも農業用水として利用されており、管理組合や地元の方々によって管理されています。また、湧出量は1日8,500トンを誇り、水温は年間通して約10℃となっているため、夏は涼しく、涼を求めて訪れる人が絶えません。

分配された水は三方向へ

三分一湧水を見学すると、上流から流れてきた湧水が分水桝に集まり、枡の中に設置された三角石柱によって三方向に水が分配され流れていく様子を見ることができます。また、隣接する三分一湧水館では、八ヶ岳南麓の湧水の仕組みや水質について学ぶことができます。三分一湧水は先人の知恵によって誕生した水を均等に流す分配装置ですが、その姿は地図のポリゴンにも表されており、先人の苦労と知恵を感じ取ることができます。

出典:
国土地理院ウェブサイト「地理院地図(電子国土Web)データ」(国土地理院)をもとに加工して作成
国土地理院撮影の空中写真(2004年撮影)
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成

「地図の雑学」
「地図の雑学」は地図技術者・地図編集者が「地図の制作にまつわる話」や「地図を使った楽しみ方」を紹介するコーナーです。
> これまでの記事一覧はこちら

COLUMN一覧へ