コラム

地図の雑学|篠路福移湿原(北海道)~原野商法の筆にある自然豊かな湿地~

MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.6 篠路福移湿原(北海道)~原野商法の筆にある自然豊かな湿地~

北海道では原野に細かく分割された原野商法の痕跡と見られる筆(土地)を見つけることがあります。原野商法とは1970~1980年代にかけて行われていた商法です。値上がる見込みのない山林や原野に対して、開発計画があるかのような説明や勧誘をして土地を販売したため、大きな社会問題になりました。

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原野商法の痕跡は札幌市の篠路福移湿原周辺でも見られます。篠路福移湿原は札幌市の北部に位置し、近くには石狩川が流れ、江別市や当別町に隣接しています。地図を見ると篠路福移湿原周辺には規則正しく区切られた長方形の筆(土地)が並んでいることが分かります。一見すると住宅地のような形状ですが、空中写真で確認すると森や林、荒れ地などが広がっています。これらの筆(土地)は原野商法があった痕跡であると考えられ、登記簿上では数百人もの地権者がいるとされています。

そのため急速な開発は避けられているものの、埋め立てなどが進んでおり、湿原に生息しているカラカネイトトンボなど動植物への影響が懸念されました。そこで、篠路福移湿原では湿原に生息する動植物の保護を目的としたNPO法人が土地を購入して湿原を守ろうとしましたが、原野商法の影響は大きく地権者への確認は困難を極めました。しかし、土地の一部を購入することで、現在では札幌市内に残った唯一の湿原として大切に守られています。

出典:
国土地理院撮影の空中写真(2020年撮影)
「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成
参照資料:札幌市北区ノースウイング第18号

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