コラム

地図の雑学|戸井線(北海道)~完成を目前にして廃線になった鉄道の筆~

MAPPLE法務局地図ビューアで見つけた気になる筆
マップルラボで公開している MAPPLE 法務局地図ビューア。全国の登記所備付地図データをマップルのベクトルタイル上に地図展開し、筆(土地)情報や形状を確認することができます。今回、MAPPLE 法務局地図ビューア(地図)を使って全国で見つけた気になる筆とその土地にまつわる話を紹介します。

◆No.26 戸井線(北海道)~完成を目前にして廃線になった鉄道の筆~

北海道函館市にある五稜郭駅から北へ進んでいくとJR函館本線、道南いさりび鉄道が新函館北斗駅と木古内駅方面に向かってそれぞれ分かれていきます。この分岐する地点において、右へ向けて大きくカーブを描きながら分かれていく筆(土地)を見ることができます。
筆(土地)を辿って行くと、洋式城郭を持つ五稜郭や函館の奥座敷と呼ばれる湯の川温泉、空の玄関口である函館空港などがあります。

この場所をMAPPLEの法務局地図ビューアで見てみる

この筆(土地)は、未完成のまま廃線になった鉄道路線「戸井線」のルートと一致しています。戸井線は五稜郭駅から湯の川温泉や函館空港の脇を抜けて戸井駅までの29.2㎞を結ぶ計画で建設された鉄道でした。計画では終点の戸井駅から先、 津軽海峡を挟んで整備が進められていた大間線(未完成)と連絡船で接続し、物資輸送などの最短ルートとして重要な役割を果たすという計画がありました。

戸井線は1936年(昭和11年)に着工しましたが、太平洋戦争における戦局の悪化や、資材不足により完成を目前にした1942年(昭和17年)に工事が中断 となり、その後、工事が再開されることなく廃線となりました。現在、線路跡は道路や遊歩道に整備されていますが、トンネルや橋梁など所々に遺構が残されており、鉄道が通る予定であったことを現在に伝えています。

列車が走ることなく廃線となった戸井線ですが、もし開通し、現在も走っていたとすれば、函館中心街から五稜郭や湯の川温泉、函館空港へと、函館市街とを結ぶ観光・アクセス線として利用されていたかもしれません。

五稜郭

湯の川温泉

函館空港

出典: 「登記所備付データ」(法務省)を加工して作成

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「地図の雑学」は地図技術者・地図編集者が「地図の制作にまつわる話」や「地図を使った楽しみ方」を紹介するコーナーです。
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